第3話 迷宮のボス戦
ガレナの案内で遂に迷宮の最深部に到着した。迷宮の奥には扉があり 迷宮のボス戦その先にボスがいることがわかる。
大体の迷宮はこのような作りであり探索者はボスに挑むかどうか扉の前で考えることとなる。基本的に一度扉に入ってしまうと特殊なアイテムでも無い限りボスを倒すまで出ることは不可能だからだ。
「ボスには挑むか?」
ガレナはなんとなく答えはわかっていたが、一応案内人の礼儀として彼らに訪ねた。
「当然だぜ」
「ここまで来て挑まない理由がないな」
「ボスを倒せば貴重なお宝が手に入るからな」
ボスモンスターを倒すと高確率で宝箱が現れる。初めてこれを倒す場合、迷宮内で手に入る宝箱よりいい物が手に入る可能性が高い。
「よっしゃ行くぜ!」
「おうよ!」
「やったるぜ!」
そしてガレナもまた張り切る三人と一緒にボス部屋に入っていく。
「かlfじゃkぁslfさぁjfぁ!」
「「「な、何じゃこりゃーーーーーー!」」」
三人の冒険者がボスを見て一様に驚いた。ガレナが小首を傾げる。
「どうかしたのか?」
「ど、どうかしたかじゃねぇよ。こいつはポイズンクロウラーじゃねぇか!」
「そんな馬鹿な。ここのボスはオオコウモリだって聞いてたのによ」
「やべぇよハングリーボックスが出たからおかしいと思ったが、この迷宮進化しやがったんだ!」
迷宮進化――迷宮は定期的に内部の構造を変えるがその差に稀に進化し難易度が変わる場合がある。一番わかり易いのが出現する魔物やボスの入れ替わりでありより強力な敵が出現するようになる。
ただ今回に関してはガレナの案内もあり魔物が全く出ないルートを選んでいた。彼らにとってはそれが結果的に仇となった形である。
『ぁjfぁjflさfjぁfじゃ!』
ポイズンクロウラーが口から毒液をばら撒きながら突撃してきた。三人の冒険者が慌てふためく。毒液の触れた地面はジュッという音を残し溶解していた。
「こ、こんなの勝てるわけ――ヒッ!」
膝が笑い動けないでいる漢に向けてポイズンクロウラーが大口を開けて迫る。男は足がすくみ顔も青ざめていた。とても避けられそうにない。
「合気――」
だが。男に迫ってきていたポイズンクロウラーが逆に吹っ飛んでいった。先程のハングリーボックスの時と一緒だった。
何故か攻撃に来た魔物が逆に飛ばされる。原因はガレナの合気にあった。だが冒険者達には理解出来ていない。
「な、何で相手が吹っ飛んだ?」
「……その、つい割り込んでしまったが余計なことだったか済まない」
戸惑う彼にガレナが謝罪した。また余計な手助けをしてしまったとガレナは考えていた。
「Dランク冒険者であればあの程度の相手にやられるわけもない。これも本来なら何かの作戦だったのだろう? 雰囲気的に本当に危機に見えつい援護してしまった。素晴らしい演技だ」
「あ、あ、あぁ、そ、そうよ。勿論演技だあはは――」
乾いた笑みを浮かべる彼を他の二人が冷めた目で見ていた。
「やはりか。それで次の作戦は?」
そう問うガレナ。Dランク冒険者に対しての期待値が高かった。
「――一応聞くが今のはあんたが?」
「そうだが、俺の合気などDランク冒険者からしたらお遊戯みたいなものだろう」
ガレナが答えると問いかけた冒険者が目を白黒させる。が、すぐに顔が強張った。ポイズンクロウラーが再び向かってきたのだ。
「しま、そ、そうだ! あんたでもあれ倒せるんだろう? だったらやっちまってくれ!」
「俺がか?」
「そ、そうだ。何せ俺たちが本気出したらヤバいことになるからな。ここはあんたに花を持たせてやるよ」
「ふむ――」
そこまで聞いてガレナは考えた。確かに以前合気について教えてくれた師匠ですらFランクの冒険者だったのだ。
そう考えればDランク冒険者が力を発揮したなら迷宮ごと破壊したとしてもおかしくはない。だがそれは明らかにやりすぎだ。
「承知した。そういう事情があるなら」
「ちょ、来てるって!」
ガレナが振り向くと今度はポイズンクロウラーが大量の毒液を浴びせてきた。範囲も広くまるで毒の大波である。
「こ、これは流石にもう――」
「合気――」
半ばあきらめたような顔を見せる彼だが、ガレナが呟き片手を差し出すと、なんと毒液を受け止めた。
「「「は? はぁああぁああぁああぁああぁあ!?」」」
それを認めた三人の冒険者が一様に声を上げた。信じられない物をみたように驚いている。
しかもガレナは受け止めた毒液を綿あめのように絡め取っていた。
「返すぞ――」
ガレナは絡め取った毒液を合気で増幅させ逆にポイズンクロウラーに浴びせてやった。自分自身の毒液など本来効くわけもないが量も毒性も受け流され増幅され返されたことでポイズンクロウラーは一瞬にして溶け煙になって消えてしまった。
「これで良かったかな?」
ポイズンクロウラーを合気で倒したガレナが三人に問いかける。その答えは暫し返ってくることがなかった――
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