日常にはいつだっていくつもの謎が潜んでいる——かも?

 どんだけダサい名前なの!? とタイトルに惹かれ、第一話を読んでその文章の雰囲気に引き込まれて毎日更新を楽しみにしていた一作です。

 全四話のオムニバス形式で、各話の主人公は年齢も職業もそれぞれ異なるのですが、彼らを繋いでいるのはタイトルにもなっている「ダサい名前の税理士事務所のコーヒースタンド」。

 税理士事務所の名前、コーヒースタンドの課金形態から店主の背景など、少しずつ見えてくる、ちょっと気になる謎の数々。

 それに加えて登場人物たちの現在や過去の、心に引っかかっている傷やもやもやした葛藤(というほど深刻でもないかもしれないですが)などが、そのコーヒースタンドや店主との関わり合いを含めて丁寧に語られていきます。

 見え隠れする人の心の機微への鋭い洞察と、それを柔らかく包み込む淡々としていながらも温かい筆致。読み終えたあとは何だか元気がもらえるとても心地よい物語でした。

 おすすめです!

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