斯くして《夢》は託された

夢は芽吹き、夢は咲き、夢は散り、夢はまた託される。

桜舞う季節。とあることから母校を訪問することになった俳優は、想い出の桜を振り仰ぎながら物思いに耽っていた。
「ここの桜を見ると、思い出すんだよ」「……ぜひ聞きたいですね、その話。まずあなたの話を聞くのが、僕の仕事ですから」
マネージャーにうながされ、俳優は語りだす。芝居という《夢》に巡りあわせてくれたひとりの教師との出逢いを。教師に擁いた果敢なき恋心を。そうして託された夢のことを。

詩のような筆致で綴られる場景が非常に美しく、読後にも心地のよい春風のような余韻を残してくれます。春にさきがけて、ひとりでも多くの読者様にお読みいただきたい一編です。きっと素敵な読書時間になることでしょう。