第17話 【最終話】自分の行動がすべてを作る
そんなある日、たまたま休日の打ち合わせの時に買い出しをするという
見知った人物が目の前に現れた。
「あなた!
それは、前の会社の社長の奥さん。私をいじめで辞めさせた張本人だった。
「あなたのせいで花園は辞めるし、社長は私の言う事を聞かなくなるし、あんな変なメス豚がやってきて私のオアシスを取り上げるし、私の人生はめちゃくちゃだわ!」
何を言っているんだ、この人は。
平社員の私ひとりが居なくなって、人生転落するわけがない。全て自分の責任なのに。
人のせいにするにも程がある。
「ま、まさかその隣の男、あなたの……?」
何を言っているのか分からず、困惑して何も言えない。
奥さんの表情が嫉妬に染まったのを見て、
「いやあ、隠しきれませんか? 僕らラブラブやさかい。すんません、どなたか知りませんけど失礼します!」
と、やたら京なまりを強調させた言葉遣いをして奥さんの横を通り過ぎる。
「きいいい! 悔しい!!!!!」
奥さんの金切り声が聞こえたような気がしたけれど、本当に叫んだかどうかは半放心状態だった私には分からない。
道の角を曲がり、奥さんが見えなくなると
「ごめんな、
何だかセクハラになるかどうかの心配で必死の形相の
「あはははは! 奥さんのあの顔!!! 目を白黒させてましたね!」
「そやな。耳まで悔しさで真っ赤やったしな。ざまあないな!」
私が涙をだして大笑いしているのを見て、
「びっくりしましたけど、
本当に、胸がスッとして晴れやかになりました。機転をきかせてくださってありがとうございます」
「ああ~、よかった。僕も
あのひと、若い男だけでは飽き足らんらしいて、なんや知らんけどちょっとなまりフェチらしいわ。そんな願望が伝わってきたら、思わず本気出してしまいますやん?」
いやー、やりすぎたと頭を掻いた
私は無事に庵黒堂の正社員となり、あやかし街でデザインの仕事もしながら順調な日々を送っている。
今ではちょっとしたデザインに困ったら、「リーフ亭の看板娘」に頼むといいよ!とまで言われるほど、あやかし界隈で有名となってしまった。
看板娘と言われるのは、なんだかちょっと照れる。
けれどあやかしの皆さんとも仲良くなれたし、依頼に来る人間側の社長さんとも顔見知りになり、庵黒堂の仕事の方でも営業ができて順調だ。
あとは彼氏が欲しいところだけど、それは心からのお祈りじゃなかったようで、まだ私の目の前に現れていない。
いつか本当に願った時に、素敵な男性が現れると
今はこのあやかし街の人たちと仕事の楽しさをもっと味わっていようと思う。
私の恋愛については、まだちょっと先のようだ。
おわり
【完結】あやかし街の看板娘 MURASAKI @Mura_saki
サポーター
- つるよしの《受賞歴》カクヨムコン9【エッセイ・ノンフィクション部門】短編特別賞・第二回角川武蔵野文学賞ラノベ部門大賞。 コロナ禍を機に執筆開始。“作品は鈍器。物語とは「静と動」「喜怒哀楽」どの方向でも感情を激しく揺さぶるものでありたい”という性癖の物書きです。 または、たとえ短編であっても、読了後には映画1本見終わったくらいの充足感を与えたい。 なのでそういう作品を書きがち&読みがち。でも重い作品も多いですが全てをエンタメのつもりで書いています。 本業はギャラリー店主。リアル小説イベントも主催。
- 無名の人「愛される老人」を目指している自由人 (星の王子さまになりたかった元少年) です。 必要な人のもとへ、メッセージが届くことを願っています。
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