第5話 子猫ちゃん?
「どうしたんですか、その耳! コスプレですか? あ! しっぽも付いてる~! お二人ともお似合いですね」
目の前の栗栖と
しっぽのアクセサリーは、なんだかリアルに横にゆらゆら揺れている。
イケメンのアニマルコスプレなんて、イラスト以外で見た事がなかったので、とても新鮮で面白い。まじまじと耳としっぽを眺めると、とってもモフモフだ。
モフモフを見たら触りたくなるのが人の性というものである。
「あの、しっぽふさふさですね。何の毛を使っているんですか? 触っていいですか?」
OKの返事をもらう前に───本当に軽い気持ちで───より近くにいた栗栖のしっぽを掴むと「ギャン!」と栗栖が悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。
「ひゃ! ごめんなさい!!!」
悲鳴に驚いて頭を下げると、そこには崩れ落ちたはずの栗栖が……いない。
代わりに昼間見た、シルバーグレーの子猫ちゃんがうずくまっていた。
どういう手品だろう?とあたりを見回すが、栗栖は見当たらない。
そんな私の姿を見て、狐崎が笑いを必死にこらえている。
「ぶはっ!!! アカン、これはもうアカンわ!!! やられてもーたな、栗栖くん!」
もうだめだとばかりに、
何だかよく分からないけど、とっても気持ちが良い毛質のしっぽを、ぎゅむっと反射的に掴んでしまった。
ただそこにモフモフがあったから握ってしまっただけなので、私に非はないと言っておきたい。
「!!?」
事態が飲み込めず困惑していた私は、このあと更に困惑することになる。黄色の毛並みの動物が喋ったのだ。
「あーあ。僕もやられてもーた! 栗栖くんのこと言ってられへんな!」
「!!?」
「とりあえずしっぽ! もう一回握れよ!!!」
今度は栗栖の声でシルバーグレーの子猫が喋る。良く分からないが、言われるがままにしっぽを握るとその場に
何が起きたのか分からない私は、軽くパニックになって言語を失った。
奥に座っている客もこちらに気が付いて笑っている。やはり何かのショーだろうか? 呼吸を整え、心の中で「これはマジックだ!」と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせる。
「実は、僕らは人間やないんです。あやかし……妖怪と言えば分かります?」
「よ……よう!!? むぐ!!!!!」
驚いて叫びそうになった私の口を
思わず顔が赤くなるのが分かる。そんな私の心中を知ってか知らずか、
「板狩様、あんた神社でお祈りしましたやろ? あの神社、稲荷なんです。あそこの神さんにお祈りできるひとは、本当に困っている人か僕らあやかしの力になれる人って決まってるんですわ。
板狩様はホンマに選ばれたお人なんです。分かって貰えますやろか? それから、他のお客様も居るんで、店の中で大きな声は勘弁してください」
緊張と口を塞がれたことで息が苦しい私は、とにかく首をブンブン振って頷くと
はーはーと息を整え、もう一度
「もしかして、向こうの人たちも……?」
「半分正解、半分ハズレだ。この店はあやかしと人間を繋いで仕事を仲介する場になってるからな」
「そういうことです。人間のお客様とあやかしのお客様です。ちなみに、僕は妖狐で、栗栖くんは妖狼やね。イヌ科の縁で同じ神さんの眷属してます」
「え、狼…………?」
妖狼と聞いて、思わず栗栖を上から下まで舐めるように見てしまった。
変化した姿は猫にしか見えなかったけど……言われてみれば犬っぽくも見えなくもない?
私がどうして疑問形になったのか、
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