第3話  精霊となって

 高い所から落ちて、莉乃は目が覚めた。

 水の中に浮いているのだと、すぐに分かった。

 大きな、大きな滝だ。

 あんなところから、落ちて無事だったなんて奇跡だ……と思って、自分の手を見て莉乃は溺れそうになった。


<透けてる!!私の身体はどこ~~?>


 その時に何処からか、イグニスの声が聞こえてきた。


『誰が、人間に転生させると言いましたか?あなたには水の加護を与えたのだから、精霊として頑張りなさい』


<そんなこと、聞いてないわよ~!!>


 莉乃の雄叫びは女神には再びは、届かなかったようである。


 莉乃は地面に上って、改めて水面で自分の姿を見てみた。

 ぼや~ とだが、なぜか濡れていない天パーの髪の毛と大きな目の自分と花ケ咲高校の制服だ見えた。


<おかしすぎるでしょう!! 精霊なら、それらしい服装があるってものだわ!>


 しかし、ここでふと気が付く。

 ここは何処なんだろうか?

 何だか、寒い所みたいだ。雪が降り出している。

 それでも寒く感じないというのは、もう肉体が無いという事だ。


 早くも莉乃はイグニスの言う事を聞いて、後悔していた。


<何が、水瀬莉乃が水で死んだから、水の加護を与えるよ!! 現世では、私はまだ生きてるかもでしょ!! 帰しなさいよーー!!>


 女神に莉乃の声は

 届かなかった。


「どうした?アル」


「いや、こっちの方から、声が……」


 莉乃は後ろから聞こえてきた声に近くの木の後ろに隠れた。


 背の高い男の若者が二人やって来たのはすぐ後だ。

 銀髪の整った顔をした男の方は、滝を見つけて喜んでいる。

 なんと、服を脱いで滝の方に泳いで行ってしまった。


「やれやれだな」


 もう一人の若者は、金髪で黄金の細い冠をつけていた。

 銀髪の若者が脱ぎ散らかした衣類を集め、莉乃の近くまで来た。


「今日は、ここで野宿だな」


 と独り言ちた。


 <あの~ もしもし~>


 莉乃が近くに行って、話しかけてもこの者には分からないようである。 


 やがて、薪を拾って火を付けていた。(とても古風なやり方で)

 莉乃もチャッカリ、火の側に行くと、何故か火の粉が莉乃を目掛けて飛んできた。


<何なのよ~>


<水の精霊なんか来ると、炎の燃えが悪くなるわ。あっちへ行け!>


 炎が、莉乃に迫って来て怒られた。












 

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