第6話  亡国の王子、リヒャルト

「そんなに悲しそうな顔をするなって!! お前が生きてれば国の再興は出来るんだから」


アルベールは、リヒャルト王子を励ますように言った。


「国の再興など……魔族に国を乗っ取られたのですよ……」


リヒャルト王子は悔しそうに、唇をかみしめていた。


「神代の精霊族と魔族の戦いみたいだよな……魔族が人間の国に攻め込んで来るなんて。北の大山脈の麓のシードック帝国は広大で、暑さに弱いディン族の格好の棲み処になると踏んだな。奴らも精霊族に敗れた後、世界に散り散りになったからな。

今回、まとまった人数で攻め込んできて、もっと、仲間と合流されると厄介だ」


アルベールはさっきまでと違う真面目な顔で言う。


「こっちも、早く仲間と合流しようぜ。」


<その前に、ご飯頂だい。>


莉乃がアルベールの耳元で言った。


「へっ!?」


<私にもご飯~>


「お前!!馬鹿か!?精霊が飯を食うってなんだよ」


<何でよ~ 精霊だってお腹はすくでしょ~>


「お前は生ればかりのはずだろ!? なら、体力ポイントは満タンのはずだ」


<~~>


「それより、初仕事だ!! 魚を取って来い!! 大きいやつだぞ!!」


アルベールが言うと、立って滝の方へ歩いて行った。


<こんな所に、魚なんているの!?>


「お前が捕まえるんだよ。水の乙女のリノ。お前の力が見たいからな」


<だから、精霊って何? って世界から来たのよ!! 分からないわ!!>


「とにかく、水に手を入れて見ろ」


莉乃は言われた通りに右手を泉に手を入れた。

莉乃めがけて、魚がすり寄ってくる。

まるで、鯉の餌やりの気分だ。

手が食べられるかと思うが、莉乃の手は透けている。

それに、水に手を浸しているだけで、お腹が満腹になっていくのを感じた。


アルベールは何処から持って来たのか、大きな柄のついた網で魚を一救い。


「わははは!! 大漁!! 大漁!! 水の乙女様様だな。でかしたぞ。リノ」


莉乃は自分の手を見て惚けていた。

自分にあんな力があるなんて……


「とにかく、明日の朝になったら銀の森まで飛ぶからな!! そこで、父上と各国の騎士達と今後をどうするか、考えないとな」


飛ぶ? これまた莉乃には理解不能なことを言っている。

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