第7話  銀の森

 リドムの銀色の葉っぱが一年中枯れないことから、銀の森と呼ばれるイリアス・エル・ロイルの総本山である。


 アルベールは、イリアス・エル・ロイルの直系の子孫だという家の生まれだった。


 風に乗って、銀の森までひとっ飛びに帰るというので、どういう事かと思っていたら、大風を呼んで、リヒャルト王子ともどもあっという間に、空の上にいた。

 やがて見えて来た、銀色の葉っぱの森。


 そこの奥の方に大きな広場があった。

 アルベールはそこに着地すると、出迎えに来ていた父や、兄弟に挨拶した。


「父上!! 無事リヒャルト王子を助け出しました」


「ご苦労であったなアル。ん? 変わった精霊を連れているな?」


「水の乙女ですか? ティエリ山脈から出た大滝のとこで見つけました。父上なら、この精霊のくらいわかりますか?」


 アルベールが父上と呼んだ人物にも莉乃はビックリした。

 アルベールとよく似ていたが、こちらは、大人の雰囲気の美人さんなのだ。

 男の人ではあるが、線の細い所がアルベールによく似ていた。


 アルベールの父は、彼の右肩の莉乃を見て、


「変わった顔だな!? 服も……名は何という?」


 <水瀬莉乃……>


 莉乃は問われるままに答えていた。


「こら!! おい!!」


 アルベールの憤慨した声に我に返る莉乃。


「ミナーセ・リョーノか? 私の所に来るか!? 私は、ロイル家の当主のベルナール・エル・ロイルだ」


 突然、ベルナールに契約を持ちかけられて、莉乃は戸惑ってしまった。


「父上!! 息子の契約精霊を奪うのは、やめて下さい!!」


 アルベールは、かなり本気で怒っている。

 もちろん、梨乃の名前が違うのだから、契約なんて成立するはずもなく、


「いや、変わった水の乙女だから、欲しくなってしまった。

 この乙女は、この戦いの鍵になるかもしれない。強き力ともろき力を感じる。

 そなたが、あるじというなら、最大限に力を引き出してやれ。力は十分に持った精霊だぞ」


 ロイル家の当主は、ニッコリと笑っていた。


「双子に言いつけますからね!! 母上にそっくりな双子に怒られてください!!」


 アルベールの言葉に形勢が逆転した。

 ベルナールはピクン!!


「それは……アル……父が悪かった……」


「だったら、今度の前線に連れて行ってくださいね」


「それも……」


「リリエンティーヌ、ベルベッティーヌ、ジルベール。ただいま。ついでにリヒトも」


 最後のリヒトの部分だけ、アルベールの口調が明らかに違った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る