夢で逢いましょう ~莉乃の願い~

月杜円香

第1話  水瀬莉乃という女子高生

 水瀬莉乃は、酷く落ち込んでいた。

 昨日までは自分が世界で一番幸せな、女の子であるとを信じていたのに。


 高校に入学して、早々に心を打ち明けられる親友に巡り会えた。


 夏休みの直前に、大岩蓮人おおいわ れんとに告白されて、付き合うことになった。

 蓮人は1学年上で、サッカー部のエースだった。

 全女子の憧れの的だったのに、莉乃のことを選んでくれたのだ。


 一緒に映画に入ったり、公園でサッカーの話を聞くのが大好きだった。

 でも、今日見てしまったのだ。

 親友の美音みおんと話しているのを……

 何気なく後をつけて行って、目撃してしまった!!

 人気のない公園で二人が口づけを交わしていたことを……


 莉乃は夢中で走り、その場から離れた。

 見たくなかった!!

 知りたくなかった!!


 美音は一番の親友だと思ってたのに!!

 私の彼を奪うなんて……


 莉乃は、九重ここのえ池公園まで来ていた。

 池の周りが散歩コースになってる公園で、春には池に植えてある桜で有名な所だ。


 蓮人とも、来たことがあった。

 池の西の端ににある東屋で、アニメの映画を見て、それぞれ推しのキャラクターのストラップを買って、交換したのはここだった。


 池に莉乃の涙が落ちた。

 波紋が広がって、莉乃の顔が歪む。

 決して、美人な方ではない。

 どちらかと言えば、愛嬌のある顔のほうだ。

 父に似れば、美形だったのに、莉乃は、母似だった。


 くっきりな二重も、鼻ペチャなところも、今はみんな、嫌いに思えた。

 髪も切らなければよかった。

 高校に入学したから、気分を新たにしようとショートにしてしまった。

 でも、そんな活発な明るさに惚れたと、コクられたのに。


 美音みおんは、莉乃とは正反対の黒髪のロングヘアが印象的で、整った顔立ちをしているいわゆる美人さんだ。

 蓮人もやっぱり、美人の美音の方が良かったという事だ。


 莉乃は通学鞄に付けていたストラップを引きちぎると、思い切って、遠くに投げようとして……

 待って、ストラップには罪はないわ……

 思い直して、身体を立て直そうとした。

 因みに莉乃の中学の部活はソフトボール部のエースだった。

 遠投には自信があるので、ここで捨てては二度と手に戻ってこないだろう……


 だが、この時の莉乃は身体をひねり過ぎていた。


「あれれ……」


 身体が一回りしてしまって、池の中に落ちて行く。

 前日が雨なのも不幸だった。


 見事なダイブで水に突っ込んでしまった莉乃。


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