この作品では彫刻家にスポットライトが当たっていますが、これは小説家にも同じことが言えるなと思いました。テーマの部分でとても考えさせられました。
嫉妬はとても醜いものである。と同時に、なければいけない人たちもいて、そういうのが創作家というものなのかなと。
秀逸なのが、『怪奇的な怖さ』と『人間的な怖さ』の両方の怖さを同時に描いていること。それと、主人公の成長もしっかりとあるので、ホラーの要素を抜いたとしても読み物として成立していること。ホラーでごまかそうとしているのではなくて、完成されたエンタメ物語の中にホラーが描かれている。
だから読みごたえもあるし、読後感も良かったです。
人間国宝の彫刻家の祖父を持つ孫娘2人(比呂と美桜)と、悪魔のような「小人」が織りなすホラー作品です。
小人は、彫刻を良くする代わりに対価を寄こせという。
私はこの作品を読んで思いました。
クリエイターとして、この小人に誘惑されたら断れるだろうか? と。
自分の作品をより良くしたい、ライバルに勝ちたいと思うのは当然の事。
しかし、対価は自分に恐ろしい現象を起こしていく。
自分の作品への欲・そこに恐ろしくも囁き続ける小人。
小人や、対価を渡した時の文章表現がとても恐ろしく、ビジュアルを想像してぞわわっとしました。
さぁ、小人と取引をしてしまった二人の運命は────!?