誰にも見えないし、誰にも気づかれない。でも、それはそこにいる
- ★★★ Excellent!!!
小学生のひかりは、転校先で「こわい話、すき?」というクラスの人気者の問いに「きらい」と答えたばっかりにいじめられるように。家では情緒不安定な母親に怒鳴られてばかりで、彼女の安らぎは自室の押し入れの中だけ。そこには彼女にしか存在を感じ取れない「ナイナイ」がいた……。
冒頭から学校でのいじめ、小学生視点ながらも巧みな文章の効果もあって非常に陰鬱な気持ちにさせられるのだが、このいじめはある出来事をきっかけにいじめはピタリと収まる。さらにお母さんの性格も落ち着き始め、ひかりの日常に平穏が戻ってくる。これでめでたしめでたし……と終わればいいのだが、本作はこの変化の様子が非常に薄気味悪いのである。
そして本作は視点人物が次々変わっていくのが大きな特徴。ひかりとナイナイの話がメインで進むのかと思いきや、物語は盲目の霊能力者とそのボディガードの青年にスポットが当たり、さらに彼らに相談を持ち込んだ女性の話へと移り変わる。一見接点のなさそうなこれらのエピソードがやがて一つの線となって繋がっていく様子はミステリー要素もあって面白い。
扱っている題材が題材だけに万人にオススメはしないけれど、こわい話が大すきな方々には是非読んでもらいたい作品だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)