あっさりとして、透き通って、それでいてどこか恐ろしい穏やかさ


 まず第一にとても読みやすいです。
 第一章『こわい話なんかきらい』は、子供めいた平易でひらがなの多い文体で書かれているのですが、普通ひらがな漢字のバランスが傾けば読みにくくなるはずなのに、文字の“比率”を変えても“均整”が崩れることはない。
 いっそ希薄なくらいにスムーズに読める文章なのですが、それが学校という閉鎖された社会で膨らむ悪意や、一見善良なようでいて確実にひたひたと迫ってくる恐ろしさを見る「ひかりちゃん」の視界なのだと思うと、何とも言えない気持ちに襲われます。言い換えれば、不思議な、ひんやりと涼しい、それでいて心地よい香気があるということです。
 さてそこから『「よみご」のシロさん』へと繋がっていくわけですが、この転換も、前章を読んで「いったいどうなるんだろう」とわくわくしている読者にとっては1cmの段差にもなりません。却って彩り鮮やかに感じるくらいです。
 こちらの文章も、やはり丁寧で読みやすいことに変わりはなく、穏やかな語り口が世界観とシナジーを生み出しています。

 また、中身も非常に魅力的だと言えるでしょう。
 何がどう繋がっているのか、それを明らかにする仕方がとても見事ですし、まるで現実と地続きのように思えるリアリスティックな世界観に潜む■■■■、そして人間の持つ悍ましさが素敵に溶け合って、読者を惹き付けます。
 ぜひあなたもどうぞ。

その他のおすすめレビュー

藤田桜さんの他のおすすめレビュー218