親も子も互いの心を知らない。だからこそ突きつけるべき”我”がある

何か特殊な環境でない限りは、本音のところで、子を愛さない親はいないし、親を尊ばない子もいない。

でも親と子は、その事実を嘲笑うかのように、シンプルじゃない。

特にこの物語の主人公のように、大人と子供の狭間にいる大学生のような時期は、ことさらに。
そこへ大人の象徴とも言うべき“結婚”というイベントが絡んでくれば、なおのこと。

親と子のすれ違い。
もどかしさ。
それを打ち破るのは、些細なきっかけと、自分の“我”を曝け出す、ちょっとした勇気だ。

古典落語の演目「初天神」を絶妙なスパイスにして、本当はあったかい親子の本音を覗かせてくれる秀作。