音楽院在籍中に精神疾患で中退したとはいえ、今でもピアノを弾き続けている小関と、チェロ奏者の郷中が織りなす話です。
音楽家や楽器のことはそこまで詳しいわけではなくて、私は一度読み終えてタイトルにもある「パッヘルベル」がなんのことだか、物の名前なのか人物なのか気になって調べました。
パッヘルベルはドイツ出身のオルガニスト・作曲家なんだなぁ、と少しだけ理解して読み返すと、パッヘルベルが作ったカノンのシンプルで調和が整っている綺麗な旋律のようで進んでいく物語でタイトルと作品が合っているなと感心しました。
春風が運んでくれるような可憐な旋律を表しているかのようなお話です。
生活雑貨のお店で働いている、ピアノが好きな小関美花は、常連客であり、
音楽院で助教として教鞭を取っている郷中という男性が気になっていた。
所帯持ちで娘もいる郷中。
昔、同じ音楽院に通っていた美花は、今もピアノを愛している。
郷中はチェロ奏者。
美花は、常連客である彼と、パッヘルベルのカノンを共演してみたい、という思いがあった。
ある日、思い切って声をかけてみるのだが――――。
終始美しいクラッシックが流れているような、そんな雰囲気の作品。
叶わないと知っていながらも、その想いを一生懸命伝えようとする脆さも含めて、純粋な主人公に惹かれました。
始まりと終わりを告げる春風が吹き抜けていくような、そんな優しいお話です。
一話完結で読みやすく、少し切ないお話。オススメの作品です♪