荒川をあなたと歩く

作者 烏目浩輔

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★★★ Excellent!!!

「ついていく富子との荒川散歩は、いつしかつれていく散歩になった」

この一節に込められた悲しさと虚しさ。
それをあるがままには受け止められない微熱が漂う、行間に潜んだ祖母への想い。

微かな希望は、僅かに溢れ落ちる祖母のささやかな笑みの中にしか見いだせないのに、それを見逃さずに掬い上げる主人公、真由の暖かな慈愛。

隅田川と江戸川の華やかさに掠れがちな荒川を背景に、穏やかに綴られる、家族という見返りのない愛情を描いた、静かに胸に染みる物語。

★★★ Excellent!!!

 認知症の祖母と散歩をする主人公。おばあちゃん子だった主人公も、今では大人だ。しかし少しでも恩返しになるならと、こうして散歩に祖母を連れ出していた。
 祖母は病気をしてから、表情がなくなり、感情を読み取ることも難しくなった。それでも、少しの表情の変化があった時には、主人公は喜びを感じていた。
 散歩のコースには川が流れ、その川は海へと注いでいる。つまり、山と海をつなぐ流れこそ、この川なのだ。知識として知っていても、実感はわかない。
 けれど——。

 日常系の作品ながら、心温まる物語です。

 是非、御一読下さい。