どこかふわふわしてあどけない、大人と子供の狭間で揺らぐ時期。
たった数年の年の差が、まるで高い壁のような隔たりを感じさせるこの時期独特の、閉塞感と遠い距離感。
彼女が背伸びをして、彼が屈む。
そうやってふたりは、ふたつの心の在り処を縮める。
作中で展開されるハルと「私」のダイアログは、そんなふたりのぎこちなくもけなげな歩み寄りを、軽やかに届けてくれる。
上野寛永寺の子院が建ち並ぶ寺町、谷中の情景の中から、ふたりの記憶の“ランドマーク”でもあるスカイツリーを望み、三百メートルを近くとも遠くとも想う「私」の心情を、静やかに綴る秀作。