孤高の絵師とその娘。その娘もまた孤高なり。

この国を代表する絵師――葛飾北斎の名は有名です。しかしその娘、お栄という絵師まで知っておられる方は少ないでしょう。私の偏見かもしれませんが。

本作は、北斎のみでなく、そのお栄にもスポットを当てているのが白眉だと思います。

そのお栄が、北斎の生涯をまるで浮世絵の如く、ぱらりぱらりと捲るようにその過去のシーンを切り取って回想し、物語は始まります。

そしてこの時代の江戸の情景――その洒脱なところも汚いところも見たままをえぐり取ったかのような描写が見事ですね。

一幅の画のようであり、そうかと思えば長尺の、どこまでもつづくパノラマのように広がっていくこの物語、ご一読してみてはいかがでしょうか。

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