唯一無二の仏教大河ドラマ! 仏視点から悠久の時の流れに酔え!

 人間ではなく、神仏の視点から描かれた仏教伝来記。
 特徴的な点はまさにその「神仏視点」。
 人間に取っては長い一生でも神仏にはほんのひと時。普通の歴史ものなら重厚濃厚に描かれるであろう聖徳太子が鞍馬の牛若丸が川中島の合戦が、あれよあれよという間に過ぎゆく。油断してたらあっという間、いや油断してなくてもあっという間。
 これが本作の時間感覚であり、いかにも小憎らしい点である。
「あーっ! この人のこともっと見たかったのに、気がついたら終わってる!?」……本作を読むとそう思わせられることしばしば(特に歴史好きな方は)。しかし、これがまさに本作の重要な点ではないか。

「人間五十年、下天のうちを比ぶれば 夢幻の如くなり」――人間の五十年は神の世界の1日に過ぎず、夢幻のようにはかないものだ――。
 神仏から見た人間はまさにこういうものではないか。「大切なものではあるが、気がついたら消えているようなはかないもの」――そしてそれは、現実の我々の人生もまた同じではないか。
 
 時のはかなさに思いを馳せつつ、悠久の時の流れにどっぷりと肩まで浸かってみる。それが本作の楽しみ方ではないか、と思う次第である。

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