戦争に散る花は、しかし確かにそこに咲いた花だった――誰の目にも触れることなく、踏みにじられて散ったとしても。
短編連作である本作に描かれているのは、時も場所も様々な戦場。そこに英雄はなく、救いもなく、あるいは食糧も安らぎも未来もない。
それでも全てを呪いながらも生きようとした者が、愛情を抱えさ迷う者が、したたかに生き抜こうとする者が、空き腹を抱えたまま未来のための種を守る者がいた。
誰もが確かに人間であった――たとえ誰にかえりみられることもなく、踏みにじられて散ったとしても。
確かに、人間であったのだ。