人と人。それぞれの物語が出会うとき。何かがカチリとはまり、まわる。

幼いころに時計の歯車を飲み込んだ少女は、自分という物語を大切にしています。ただ、彼女の飲み込んだ歯車は、もしかすると運命の歯車だったのかもしれません。
時を刻みつつも、自分一人で回る彼女の歯車は、かみ合うものを失ったままだったのかもしれません。

無為に達観したかのように、前半の彼女は、自分という世界で完結していました。

ただ、世界は彼女だけではありません。

彼女がなくした歯車に、重なり合うかのような出会いがそこにありました。

戸惑いながらも、彼女は徐々にそれに気づいていきます。

ゆったりとした感じから、徐々にかみ合っていく二人の歯車。
それぞれ独立した物語の文脈が、重なり合い新たな物語の文脈へと変化する。


そんな予感と共に、彼女はそれを自覚する。

人と人の出会いを、互いに影響しあうさまを、見事に描き出していると思いました。

ぜひ、皆様もお読みください。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番と共に。

その他のおすすめレビュー

あきのななぐささんの他のおすすめレビュー299