その刀匠は刀を打ち、刀を《手折る》

刀匠・四季 宵一郎 宗治――彼の打った刀には季節が宿る。春の刀には桜が綻び、夏の刀は露を纏う。秋の刀には紅葉が舞い、冬の刀は雪の結晶が浮かびあがる。実に美しきそれらの刀を受け取るには、ひとつだけ、約束ごとがあった。

断じて、血で穢さぬこと。

刀とは握る者の魂を映すものである。故に罪を吸った刀は、時に人の魂を狂わせることがある。
よって穢れた刀は、四季が責任をもって、手折る。

刀匠でありながら《手折人》という異称を携えたひとりの男が循る、春夏秋冬。そこには悲喜こもごもたる其々の人生がある。

風景が目蓋に浮かぶ巧みな筆致といい、ほんとうに素晴らしい短編連作です。是非ともご一読ください。