宗教家には分からない境地

 死に際に現れる死神がもたらす、ちょっとした奇跡…というのが、読後の第一印象です。

 死神というと、兎角、怖がられ、悪く書かれる事が多い中、この物語の死神エルザは首に縄をかけてあの世に連れて行くような、ステレオタイプのものではありません。

 物語が、それをする必要がないというのもあります。

 主人公は、毎日をちゃんと生きている普通の一家、普通の犬です。

 その一生の間に、無駄な日や浪費した時間が一瞬たりともないかといわれれば、そんな事もないでしょうし、多分、彼らに聞いても首を傾げて考え込むだけなのだろう、というくらい、普通の人たちです。

 普通に生活をして、少し違ったイベントで、保護犬だった犬ロンを飼いました。

 とても悲しい出来事があったけど、ロンは約束を守り、自分ができる限りの事をしました。

 文字にすれば、たったこれだけなのに、また物語自体7000字に満たない短編なのに、何万語と胸に去来する言葉があります。

 きっと読んだ人は、皆、そう思うはずです。

 だからいいます。読んで下さい。

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