第8話 主人公の親友 Ⅰ

俺は長嶺大和だ。


なんか俺がこの物語の主人公枠らしいが、それは違う。


真の主人公は太郎出川裕太郎


小学校からの付き合いで俺の唯一と言っていい大切な親友だ。


太郎と呼んでしまっているけどな。


僕は・・・あああもう、言ってやる。


俺は翔子が好きだ。


素直になれないし小さい事でよく喧嘩もしてしまう。


だけど、翔子に惚れてしまったんだ。


なんでだろうな。


一目惚れという奴か。


なんでか知らないが、俺は女難の相のせいで変なことによく巻き込まれてしまう。


そして、その度に太郎が俺を助けてくれる。


まあ、解決方法には時々異議を申し立てたいなとは思うことがある。


たまにヤケクソになっているのか放置することがあるけど、そこは助けて欲しいなぁ(切実)


バイトで忙しくて一緒に遊ぶこともなくなってしまったけど、いつかまたどこかに一緒に行きたいなぁと思いながら俺は遠足が終わって帰ろうという時にお母さんに呼び出されて、あいつらと分かれた。


その時はかなり嫌な予感はしていたことを無視してな・・・





















用事は母の買い物の付き添いで家に帰って晩御飯を食べ終える頃に電話が鳴り、出ると翔子が家に帰っていないことと理由は何か知らないかと聞かれた。


俺は頭が真っ白になってしまった。


(翔子に何があった・・・)


俺は急いで着替えて母に一言だけ言って、外に飛び出した。


駅から家への道を遡って翔子が寄りそうなところを探しながら携帯にかけていたが、出る気配もなかった。


それは太郎も同じだった。


(頼む、無事で居てくれ・・・翔子、太郎)


太郎はこういう時には絶対動いているはずだ。


(あいつが何も知らないはずがない)


一時間も彷徨い続けていると警察のサイレンがすごく鳴り響いていて、俺の家の方面に向かっている感じだった。


(そういえば廃工場があったなぁ)


嫌な予感がする。


俺は廃工場の方へと走った。


何十分かすれば廃工場の近くまで行くと夥しい数のパトカーが止まっており、緊迫した雰囲気だった。


(おい、まさか・・・勘弁してくれ・・・おい)


後ろからは救急車が数台が現場に入っていき、俺の最悪な想像に現実味が帯びてきてしまった。


だが、ここからではなにも分からなくて俺は家に帰ろうとしたタイミングで電話がかかった。


「大和!今どこにいる?!」


「俺は翔子を探しに出て廃工場の近くだよ」


「今すぐ帰ってきなさい!!」


「分かった」


物々しい現場を背にして家に戻ると翔子と隣の水上の家の前にはパトカーが停まっていた。


(おいおい!やめてくれ・・・)


母がちょうど玄関から出てきたところだった。


「大和!」


「母さん!何があった?」


「翔子ちゃんとお隣の水上さんのお嬢さんが誘拐されたって」


「誘拐?!」


「だけど無事に戻ってきたところみたいよ」


「よかった・・・って太郎はどうした?」


「それが分からないのよ」


その時に翔子さんのお母さんが玄関先で警察官と話していたのが聞こえた。


「すみません。本当にありがとうございました」


「今後は気をつけてください」


無事でよかったが、太郎は本当にどうしたんだ?


「とりあえず、家に入って」


「ああ」


その日は何事もなく終わって翌日学校に行った。


太郎、翔子と水上さんが欠席だった。


翔子と水上さんはあんなことがあったから仕方がないが、太郎が休むなんて・・・


本当に珍しいことが起きているなと思いながらとてつもなく嫌な予感がした。


気になってお昼休みに担任のところまで行って聞いた。


「出川はどうしたんですか?」


「・・・君になら言ってもいいかもな」


「どういうことですか?」


嫌な予感はやはり当たったらしい。


(太郎・・・なんでそんな無茶なことをしたんだ)


翔子と水上さんを助けるために意識不明の重体になって、入院中だが未だ意識が回復していないらしい。


「俺の独り言だから聞かないでくれよ・・・今○×病院にいてこれから行かないいけないんだよなぁ、放課後に」


「ありがとうございます」


「馬鹿、独り言だぞ」


いい先生を持ったなぁと思いながら職員室を後にして俺は午後の授業を受けたが、頭に入らなかった。












放課後になると俺は真っ先に教員用の駐車場の出入口に立って待っていると蒼色の国産のスポーツカーが出てきて、俺がいたところに停まった。


乗るとすぐに発進した。


「見てショックを受けるなよ」


先生はその一言だけを言って運転に集中した。


(そんな酷いのか)


数十分もすれば病院に到着して先生が受付を済ませてエレベーターに乗り、集中治療室がある階に着き、その階での受付を終えると看護師の案内についていった。


「家で大人しく安静にしていろと言ったはずなんだがなぁ」


先客がいたようだって?!


「翔子?!」


「大和?」


俺は無意識に抱きついてしまったが、俺は悪くないよな?


「大丈夫だったのか?」


「うん、でもゆーちゃんが・・・」


いつもなら絶対殴り飛ばされて頬に紅葉ができているところだが、今はそんな余裕すれないのか・・・


そして、水上さんがかなりやつれていた。


その視線の先には・・・


「ッ?!」


何の機械か分からないが大量に繋がれていている太郎がいた。


俺は言葉を発することができなかった。


看護師が付きっきりで処置し、医者もかなり緊迫した顔で指示をしていたことが太郎の容体の悪さを物語っている。


「ゆーちゃんが・・・私のせいで・・・」グスグス


「・・・」


俺はどうすればいいのだろう。


なあ、太郎?お前なら今の状況をどう、じゃない!


目を覚めせよ!!


いつものように悦に入ったり、笑ったりしてくれよ・・・


なんでお前がやられなきゃいけないんだよ!!
















「まだ、連絡が取れませんか?」


「はい、残念ながら・・・」


「なにをしているんだ。息子が死にかかっているんだぞ・・・」ギリリ


続く?

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