第5話 脇役の本領 Ⅰ
どんなもの語りでも主人公補正とおいうチート級のバフが付与されており、困難な場面を乗り越えてきた。
その場に言わせる脇役にも付与される時がある。
だが、その場に主人公がいなかったらどうなるか分かるだろう。
当たり前だが、そんなバフは付与される訳がない。
なんでそんなことを言っているかって?
俺は今、廃工場で眠らされている主人公のヒロイン二人を背後に不良というか半グレに囲まれている。
事の数十分前・・・
とある人物に電話をかけてここ最近
俺の家からは少し遠いが、
まわりにはあまり住宅がなく、一通りも少ない上に敷地が割と広いせいで
片手運転は法律違反だが、そんなことを悠長に言っていられないし、緊急事態ということでご勘弁願おう。
然るべきところに電話をかけ終えたところでさらに加速して向かった。
俺が賭けに勝つか敗けるか、俺の運次第だ。
廃工場に着くと自転車を他の人が見つけやすいように乗り捨ててから服装を目立たないようにしてから立ち入り禁止と書かれている看板がある鉄条網とわずかに開いているゲートから敷地内に侵入する。
途中で仕込みをしながら周辺を警戒して敷地の真ん中にある大きな製造工場の建屋に近づくと入口に3人が見張りかのように屯っていた。
耳を澄ますと最悪の想定が現実となったようだ。
「今日はかなり上玉らしいぞ」
「畜生!!なんで俺が見張りなんだよ」
「まだお零れを貰えるだけありがたいよ。あのボスが今までそうしなかったんだからな」
諸君はもう分かるな。どういう意味かを・・・
手遅れかもしれんが、急いでやるしかない。
奴らの足止めをしなきゃならんからな。
周りが暗くてが目を慣らしているとはいえれど、見えにくいことに変わりはないがそれは向こうも同じだ。
「クソ!!ちょっと用を足してくる」
「おう」
よし、一人が離れていったからすぐに気づかれないように背後を取って口と鼻を塞いでから膝カックンの要領で相手を転倒させて頭部を地面に直撃させて気絶させて途中で拾った針金で手足を静かに拘束した上で見つからないように隠した。
そして、入口にいた二人組のところに忍び足で行って背後をとって短い鉄パイプでこめかみを殴ってさらにもう一撃で気絶させて動けないように処置して見つからないようにする。
やっていることは完全に犯罪なので良い子の皆さんは真似しないでね。
俺は慣れているからいいけどな。
ドアをゆっくりと開けて、中に人がいないことを確認してから侵入し、元々事務所であろう所を抜けて人気を感じて咄嗟に階段を登って隠れてやり過ごした。
相手はよほど気分がいいのか、馬鹿だったのかは知らんが大声でしゃべっていた。
「なあ、まだ宴が始まらんのか?」
「上玉が目覚めるまで待てとさ」
「ああ、ボスのお達しで全員に厳命してるらしいぞ」
「なんでも怖がっている方が昂るらしいな」
「まあ、やれたら俺はなんでもいいけどな。ガハハハッ」
まだ間に合うな。
俺の推測が合っていれば2階はそういう事に向いている場所と繋がっているはずだから、このまま道なりに行く。
もちろん、トラップは仕掛けておくがな。
二階は一階部分または稼動当時の天井クレーンの点検歩廊があり、幸いなことに落下防止のためか手摺に目隠しをするかのように鉄板が張られている。
この建物の中心は機材が撤去されているおかげでかなり広くて隔てるものが少ないから音が割りと響くようだ。
連中の話し声が不明瞭ながら聞こえてくる。
天井クレーンが端に寄せられていて何かを吊っているらしく、チェーンがしたまで下がっている。
ゆっくりと近づいていくと
しかし、あの感じだともう少しで目覚めるかもしれんな。
天井クレーンに静かに登って二人を吊るしているフックブロックと繋がっているクラブトロリーがあるところまで行き、高さを目算で割り出して下にあるマットの柔らかさも推定した。
(高さはおよそ5メートルで、マットは体育用の柔らかいようで硬い奴だとすると5点着地は必須だな・・・)
さらに天井クレーンが工場の端に寄せられている壁に通行口または破壊可能な部分の有無を確認した。
(背後はこれで問題ない)
あとは向こうの戦力を知りたいところだが、生憎とそこまで偵察する余裕もなくて事態も急を要する。
(まあ、俺は飽くまでも時間稼ぎ要員しかないからな)
最小限の力でいい感じの騒ぎをどうやって起こすかが、大きな問題だ。
あまり大きな騒ぎにしてしまうと俺が対応しきれないし、小さすぎるのも困る。
っとその前に天井クレーンの操縦席を見て動くかも大事だ。
上からの奇襲されても敵わないからね。
(こいつは電気式でかなり静かでかつ作動時のサイレンもないようだ)
下にいる見張りが少ないことを確認してフックブロックを下ろしながら天井クレーン自体を動かしてチェーンが二人に当たらないようにしながら超微速で固定して急ぎでクレーンガーダに登ってマットのあるところに目掛けて飛び降りた。
(案外ネットに落ちている知識ってバカにできないね)
そんな悠長なことを考えているとチェーンが動いていることに気が付いた見張りの一人が俺の着地先に入ろうとしていた。
上手いこと奴の肩に足を着地させて衝撃を逃がして、次に巻き込む感じで道連れにして倒して残りの衝撃を逃がす。
「ッッ!!!」
割と痛かったが、着地より仕込みの食い込みが痛いが、身体に異常はなかった。
もう一人の見張りが俺に気がついて排除しようと容赦なくナイフを取り出して向かってきたが、まず俺の下敷きになった奴を無理矢理立たせて盾にしながら敢えて突進している間に仕込んだ短い鉄棒を出した。
向かって来た奴は人間を盾にされたことで怯んだのかナイフ先を下げたことを見逃さずにそのまま盾にした奴を突き出すような感じで押し出すと、慣性の法則で二人はぶつかって倒れる。
短い鉄棒で頭部のこめかみを殴って気絶させて無力化した。
ほかにいた見張りが異常に気がついて、向かってきているが全員ではない。
一人は二人くらいは異常を報告しに行ったようだ。
気絶させた一人のナイフをすぐに拾って一番接近している敵に投げると、向こうは避ける。
避けると大体ナイフの方に一瞬でも集中して走る速度も落ちることが狙いであって、当てることではない。
向こうは俺が外したことをホッとしたのかこっちに嘲笑を見せようとでもしたのかは知らんが、残念だったな。トリックだ。
鳩尾に目掛けて鉄パイプを殴ってさらに後頭部を即席メリケンサックで殴って気絶させると、先と同じように人を次に接近している奴に突き飛ばしてマットの上で倒れている二人のところまで後退した。
ここで戦っているのに人質を取られるようなヘマはしない。
ポケットには多い目に拾った小石を一つ手に取って鉄製のY字のなにかにこの建屋の元事務所にあった紐状のゴムをつけた即席スリングショットで狙いやすく当たりやすい胸部を狙って放つと思ったよりゴム紐が良かったのか弾道が少し上に逸れて頭部に直撃する。
俺の不良時代が無駄にならなくてよかったぜ。
そして、こいつらはただの不良じゃない、半グレ集団だ。
中々に最悪な相手することになったが、まあいい。
ここからは主人公補正もない脇役が物語の進行を守る戦い幕開けだ・・・
続く・・・
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