第12話 現実へ帰還
何度目の挑戦だろう・・・
いくら筏を工夫しても、どこから水が入ってはすぐに沈んでしまっては溺れそうになりながら元にいた川岸へと戻される。
他の人は易々と川を渡れているのに、俺だけが置いていかれる。
どうにかして、渡らなければいけない。
そう思っているのに上手くできるビジョンが見えてこないし、なにか阻まれて続けている気がするんだ。
何でだろうな。
まさか受け入れ拒否されるほどの極悪人にでもなったというのか?
確かに心当たりがある事は多すぎて、どれのことか分からん。
だけど、せめて残像思念じゃなくてキチンと成仏されたい。
まだ、地獄に落とされる方がマシだよ。
こうなったら無理やり泳いで辿り着くか…
川の流れ方が心配になるが、溺れたら溺れたで考えることにしてすぐに行動を起こした。
川に入って胸元くらいの水位になるとすぐに平泳ぎで川を渡り始めたが、先まで穏やかだった水流が予兆もなく激しくなり、すぐにクロールに切り替えた。
しかし、何の効果もなく下の方へと流されてしまう。
こうなったら、あれだ
「川の水が深い!オボボボボッ!!」
やってみたものの意外もなぜか溺れていないどころか、海水のようにぷかぷかと浮いている。
だが、流れに乗って川渡りから川下りに変わっていた。
もう、行き着くとこまで行くしかない。
川岸に戻ることをせずにただ、ぼーっと周囲を眺めた。
渡り切った人から手を振られ、何かを叫んでいるように見えるが、俺には聞こえない。
三途の川を渡る資格というのかは分からんが、渡させてはもらえないのか。
また、俺が頑張らないといけないと思うとちょっと気持ちが疲れる。
「さっさとくっ付けばいいものを…形はどうであれ、互いのことは好きなはずなんだよなぁ」
ぼやいても事態は進展しては無さそうだな。
あの二人はそのことだけに関してはチキンだから仕方がない。
死に損なったが、この後はどうなるんだ?
絶望的だろうな。
人ってどつしようもなくなると乾いた笑いしかでない。
色々と考えているうちに河口らしきところに辿り着き始めると何やら眩しくて、目を開けてられなかった。
もう、この先は何があるか分からないが最後まで俺らしく行こう。
「いいよ!来いよ!」
身体に鈍い痛みと気怠さが襲い掛かり、目を開けられなかった。
いや、開けずらいのだ。
身体が言う事を聞かず、何かに固定されているような気もする。
徐々に目が覚めていくと喉に管が入っているような感じがし、病院で聞くようなピッ!の音と人の声が耳に入り、自分の置かれている状況が分かってきた。
あの後は病院に運ばれただろうな。
一度は言ってみたいセリフを言おう。
「
あ、声が出ないのか・・・
「お、おい。目覚めたぞ!」
「やっとか・・・」
「一つの山場を越えれたぞ」
「奇跡だな」
「これからが大変だぞ」
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