新解釈・信長

信長を取り扱った論評や小説は数多あります。その中の一つとして面白く新しい解釈をされている側面も垣間見えて最後まで楽しく読まさせていただきました。

信長と父信秀、そして、守役の平手政秀、そしてまたもう一人の父であるマムシの道三、信長は父となる相手に非常に恵まれた人材をいただきながら、しかし、なぜかその時間的な縁が非常に短い、そういう点では非常にお気の毒な悲しい立場に立たされます。

筆者にはそれが信長の行動の根底に軸としてあることを説かれます。「人の情」という面において、非常に説得力のある説であるように感じました。

そしてその情の流れる先に自らの運命までもが支配されてしまう。実は信長は非情の人ではなく、常に熱く深い情を欲していた人物ではなかったのか、そのようにも感じました。

以上のことを思うにつけ、改めて、タイトルにある「さびしい信長」、これが的確に的を射た表題であったと納得できる所以です。

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