キラキラ溢れる泡沫は、消えゆく恋か永遠の愛へと変わるのか

『むかしむかし、遠い海の水底に、それはそれは美しい人魚の姫がすんでおりました』
 誰もが一度は耳にしたことのあるであろう、人魚姫の物語。
 その名作をベースに、新たな美しい海と陸の恋物語がここに展開されてゆきます。

 主人公のエレオノーラは、まるで海の底にまで光がパッと広がりそうなほど、可憐で明るい人魚の女の子。彼女は幼い頃に助けてくれた男の子が忘れられず、その時に出逢った王子様に恋をしています。
 彼が海辺にやってくる日を待ち望んでいるエレオノーラ。王子には必ず少し口うるさい意地悪なギルバートがついていて——。

 陸に憧れ、恋に憧れ、愛される日を夢見るエレオノーラ。
 彼女達の日常は、事件によって一変。夢にまで見た地上は、海の中のそれとは違って様々な思念が渦巻いていることを知ることになる。

 人魚姫といえば悲しい結末を思い浮かべる人が多いはず。

 ただこの作品は、とにかくヒロインの健気で可愛い姿に元気や笑顔をもらったり、突然海の生き物が陸に上がればそうだよね……という場面を丁寧に描写していたりと、全く新しい人魚姫の物語。想い合うがゆえにすれ違ってしまう二人にもどかしい気持ちになりつつも、ラストの展開に繋げる筆力は本当にお見事……!!
 読んでいるこちらも、きっと大丈夫、きっと大丈夫と信じて次のページをめくってしまうような、不思議な力がこの二人にはあるのです。

 キラキラした恋心や、情景の美しさが眼に浮かぶような、まるで美しいサンゴ礁の中に寝そべっているような気持ちになれる物語。

 その恋心は弾けて影すら残してもらえない泡沫と消えるのか、それとも永遠に輝き続ける宝石のような愛へと変化していくのか。
 是非ともご一読あれ!!

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