3日目
第10話
噴火まであと二日。今日は朝から市場にまた買い物をしに行くことになった。というのは、昨日の作戦会議で噴火の前に何とかしてできるだけの人を避難させなければならない。そのためにフキエルたちの家を爆発することにしたのだ。
爆発の方法は・・粉塵(ふんじん)爆発。
俺たちは六日目の十一時、つまり噴火の二時間前にこの木の家に小麦粉を大量に撒く。そして火をつけて爆発させる、という手順で行うつもりだ。家が突然爆発するのだから逃げ出さない人はいないだろう。
「あ、これかな?」
未来が言いながら指を指したのはまさに大きな袋に入った小麦粉だった。俺は少し考えてお店の人に言う。
「これ、五袋ください」
すると男の人は驚いた顔をして
「お兄ちゃんたち、そんなに買うのかい?」
と言う。
「まあ、はい、お店のおつかい頼まれたんで・・・」
案外間違ってはいない話だ。フキエルとティアイエルは今日は、店の仕事をしているのだから。
「ふうん。あ、十二アスね」
納得していない顔で言う店主。俺は気づいていないふりをして十二アスを出した。ようやく五袋台車に乗せ終わったとき、
「ねえねえ!拡くん来て!これ可愛くない!?」
と未来が無邪気に俺を呼ぶ。
というかいつの間にそんな遠いところにいたんだ。
俺が台車を押して未来のところに行くと、そこには綺麗なネックレスがあった。ピンク色のクローバーがついているネックレスだ。俺はなぜかそれに違和感を覚えた。前にも見たことがあるような、謎の懐かしさがこみ上げてきたのだ。今すぐにでも口に出したかったが、前にもみたことあるっけ?という言葉は飲み込んでおく。実際にはそんなことあるはずないのだから。
「・・・たしかにきれいだな」
そう言うと、未来はもっと笑顔になって、
「そうでしょ!?拡くん買ってくれたら・・・うれしいなあ~!」
と言った。
正直無限にお金があるわけじゃないから、あまり使いたくないなあ・・・
「え。」
しまった・・・心の声が漏れてしまった。
すると未来はムッとなって言う。
「けち。だから友達が少ないのよ」
ははは・・・・・・なんかグサッとくるなあ・・・なにかな?これ何かな?気のせいだといいな!
俺は未来から放たれた矢に降参して、
「分かった!買うよ。」
と言った。
「ほんとっ!?ありがと!」
しまった。・・・この無邪気な笑顔にも勝てそうにないな。
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