第6話
瞬間、この場にいる全員が真剣な顔つきになった。俺はそれを確認してから教科書のポンペイのことが書いてあるページを開く。
「読み上げるよ。・・・六二年二月五日、ポンペイを襲った激しい地震によりポンペイや他のカンパニヤ諸都市は大きな被害を受けた。街はすぐに以前より立派に再建されたが、その再建作業も完全には終わらない、八七年九月二四日の午後1時ごろにベスビオ火山が大噴火し、一夜にわたって火山灰が降り続いた。翌二五日(噴火から約十二時間後)の噴火末期に火砕流が発生し、ポンペイは一瞬にして完全に地中に埋まった。降下火山灰はその後も続き、毒ガスによりポンペイの人々の命を次々と奪っていった。・・・ここまでかな」
俺は教科書を閉じて言う。
「俺と未来は五日後までに元の世界に帰る方法をさがす。フキエル、君はどうする?俺たちと一緒に帰る方法を探すか、ここに残るか、ティアイエルたちを連れてこの五日間で国から逃げるか、はたまた別の方法か・・・どんな選択でもいいと思う。フキエルが自分で決めることだ。まあ、俺たちと同じ状況である君を放っておきたくないななんて思いながらこんな提案してんだけど」
「・・・僕は・・・」
「・・・僕は、残りたい。本当はティアイエルを連れてこの国から出たい気持ちもある。でもティアイエルはこの国のことが本当に好きで僕と一緒に国を出るなんて考えないと思う。僕一人で元の世界に戻ることもこの国を出ることもできるけど、この国を捨てることはこの店と妹を捨てることになる。僕は、そんなことできない」
俺はその意志を聞いて言葉をかけようとした・・・が、突然未来がガタンと立ち上がり言った。
「よしっ!それじゃあ私たちは私たちのできることをしなくちゃね!拡くん、元の世界に戻る方法と同時に私、やりたいことできたの」
「なんだ?」
まあ、なんとなく予想はついた。
「確かに店とか街はなくなってしまうかもしれない。だけど、人なら一人でも多く救うことが出来るはず。難しいことかもしれないけどそれでも多くの人を噴火から守ることができるなら私はやりたい」
そうだな、この世界で噴火するということを知っている人は俺たちしかいない。だったら俺たちが動かなければ。俺は笑って
「賛成だ。あと五日でできるとは限らないけど、やってみるしかない。何より、このままのこのこ帰るのは納得できねーからな」
と言うと、フキエルも
「僕もその案に乗るよ。あと多分ティアイエルにも信じてもらえると思うから協力してもらうように僕から伝えておくよ。協力者は一人でも多いほうがいいからね」
と言ってくれた。ここからは何が起こるかわからないし、戻る方法も見つかるかもどうかわからない。大切ななにかを見落とさないように慎重にいこう。
俺はそう思った。
その時、
「ただいま戻りました~!」
と言いながら入ってきたのはティアイエルだった。その時点で会議は終了し、俺たちは夕飯を食べることにした。食べている間に俺と未来はみらいの日本というところから来たんだ、ということをティアイエルに説明すると最初は少し戸惑っていたが、話しているうちに納得してくれた。未来は嬉々として自分たちがいた世界のことをティアイエルに話し、ティアイエルも楽しそうにその話を聞いていた。
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