2日目
第8話
チュン・・・チュンチュン・・・
鳥の鳴き声がする。俺はベッドからむっくりと起き上がって周りを確認する。いつもと景色が違った。
・・・あ、そうか、俺ポンペイに来てたんだっけ。
初めていった宿で起きた朝のような新鮮さを感じながら、俺は寝室を出る。
リビングにはすでに三人がゆったりとくつろいでいた。
「あ、おはよう拡くん」
「おはようございます」
「先輩、おはよう」
なんかさっきから頭が痒いと思ったら、昨日風呂入ってないんだった。
「そろそろ行きましょうか。」
ティアイエルが突然言い出す。
「行くって・・・どこに?」
俺が聞くと未来は満面の笑みで
「お風呂っ!!」
と叫んだ。
******************
「う~ん!気持ちよかったああ!テルマエのお風呂最高!」
「ははっ、それは良かった」
確かに最高だった。浴槽もあったし全身を洗い流せる。古代ローマがこんな充実してたとは。俺は改めて驚く。小高いところにある公衆浴場はみんなの憩いの場として親しまれていることがよくわかった。
次に俺たちは広場に向かうことにした。なんでも朝だけやっているファストフード店があるらしい。
「それにしても・・・人多いねえ。こんな朝からみんな動いてるんだあ」
未来が感嘆の声を上げる。
「そうだね、商人とかがちょうど働き始めた時間だから今は特に賑わってる」
市場には色んな人がいた。薪を台車ではこんでいる人、野菜などを買う人、売る人だって笑顔だ。
「ここだよ。」
フキエルが指した先にあったのは屋台だった。
「へえ・・・色んな種類のパンがあるんだな。」
俺とフキエルはチキンドッグ、未来とティアイエルはオリーブサラダパンを頼む。
「ん!うまい!」
気軽に食べられるファストフードがあるのも嬉しい。
とその時上から何かが降ってきた。
不思議に思って拾ってみると・・
「・・・・・・!」
それは紙切れだった。それもただの紙切れではない。明らかにまだこの時代には無いであろうノートの切れ端だ。俺が固まっていると他の3人ものぞき込んできた。
「え、なにそれ・・・」
「わからない。今、上から降ってきたんだ」
「ん?なんかかいてあるよ?」
未来が何かを見つけて紙を裏返す。
“ 我が時の番人
これを読める者未来から来た者なり
ならば時を越へ 時を考えてみよ
おのずと道は開けるべし ”
紙にはそう書いてあった。
「これは・・・戻るヒントかもしれません」
そうだろう。誰が書いて上から降らせたのかは謎だがとにかく考えてみたほうがいい。今は午前八時。俺は少し焦った口調で言った。
「なあフキエル、急いでフキエルの家に戻っていい?」
「うん、いいよ」
「翻訳するとこうだな。
私は時の番人。これを読むことができる人はみらいから来た人だ。
なら時間を越え、時間を考えてみろ。
おのずと道は開けるだろう」
フキエルの家に戻った俺たちは紙切れのことを考えていた。
「時間を越え、時間を考えてみろ・・って何かしら?」
そうだ、そこが問題だ。時間って、なんの時間だ?
しばらくしてフキエルが言う。
「時間・・・そうだ、先輩たちがここに飛んできたときって何時だった?」
俺は少し考えてから、
「朝だったから九時前くらいだったと思う」
と言う。
「私は・・・昼の、一時頃・・・」
俺はそれを聞いた瞬間昨日見た教科書の内容を思い出した。
二七年八月二四日の午後一時頃──
「あ・・・・・・」
俺は声を漏らす。フキエルも感づいたようで
「そうか、午後一時頃は火山が噴火する時間だね。でも・・・待てよ、それだったらわざわざ5日前にここに来る必要あったかな?三日前でも噴火する当日だってよかったはずなのに・・・それに未来先輩と拡先輩のここに来た時間が違うじゃないのはなにか意味があるんじゃないかな・・・?」
と疑問そうに言った。
「時間が一緒じゃない理由はわかりませんが、時間の流れを大きく変える日が五日前のその日なのだとしたら少し納得がいきますね。そしてまた流れが大きく変わる時間が噴火するとき、ということでしたら・・・抽象的な説ではありますが、」
口を開いたのはティアイエルだ。その説が一番高いだろう。
「それまでは帰れないってことかしらね」
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