さながら万華鏡奇譚――その辺縁の地では《女》が光る

安是の里では「女」が光る。
そんな嘘か誠かもわからぬ噂を頼りに遥野郷の奥地を訪れたひとりの学者は、案内役だったはずの油屋に騙され、崖から転落する。怪我を負った学者を助けたのは熾のような熱を帯びた女だった。その後意識を取りもどした学者は、恩人たる女がまだ年端もいかぬ「娘」であったことを知る。
囲碁、将棋、西津カルタ、富突き、丁半賭博、花札、そして「色当て」と賭け事を好む男衆で賑わうその小屋で利巧に立ちまわる娘「阿古」の幼けなさと敏さにこころを惹かれた学者は彼女を養子にし、都に連れ帰りたいと想うようになる――
「安是の娘」が「女」になったとき、果たして如何に《光る》のか。

民俗学の文献を想わせる厚みのある世界観と婀娜めかしく華やかな場景で織りなされた奇譚。まるで万華鏡のよう。読み終えた後は暫く、余韻に浸り、放心致しておりました。それほどの熱を帯びた短編小説でございます。

魅了された御方は本編である「かすみ燃ゆ」も必読です。