一口には表せない関係だからこそ魅力的な二人です

不機嫌な錬金術師(本人曰く薬師)のシルヴァンの店には、いつも厄介事を持ち込んでくる美人の客がいます。
彼女の名前はオーレリア。正体は不明ですが、何やら強大な力を持つ彼女はいつもシルヴァンの店にやってきては、彼をからかったり子供のようなことを言ってみたりして彼の眉間に深いシワを刻み込みます。

飄々とした美人の客と、不機嫌そうに対応する無精髭の錬金術師――と思いきや、二人の間には言葉にできない何かがあり。
迷惑だなんだと言いつつも、結局はオーレリアの尻拭いをしたり言うことを聞いてあげてしまうシルヴァン。オーレリアもまた、厄介事を起こしているように見せかけて実はシルヴァンの利益になるように動いていたりと、素直じゃない二人の大人に、読者は錬金術師の弟子であるルネと一緒についニヤニヤしてしまいます。

彼らは子供の恋愛のように露骨に嫉妬したり顔や態度に出すわけではありません。そもそも二人の間にあるのは恋愛感情なのかもわかりません。
それでも、さりげない動作の一つ一つに互いへの想いが込められているようで、ついつい深読みをしてしまいたくなる。そんな魅力に溢れた作品です。

しかも、こんな関係の二人なのにオーレリアにはなんと婚約者がいたりもして。
もっと仲が進展してほしいような、このままの関係でいてほしいような、甘酸っぱいようでいてドライな関係の二人。
この二人の間にあるのは恋なのか恋ではないのかすら曖昧ですが、いつまでもニヤニヤ見ていたくなる関係がお好きな人にオススメです!

ちなみに私は二人の結末を見たい派です(笑)

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