屋敷に入る前から日常と非日常の亀裂は口を開けて待ち構えている

ゲームセンターとコンビニも零時を回る前に閉まる鬱屈の行き場すらもない田舎の少年少女たちと幽霊屋敷を題材にした短編連作ホラー。
仰々しく脅かそうとする小細工は一切なく、日常と地続きの怪異が紛れ込こみ、気がついたらどこが始まりだったかもわからない描き方がとても高品質。
原因も正体も不明の幽霊と同じように、隣にいて無自覚に呪いをかけてくる友人、不器用な優しさが裏目に出る先輩など、ひともしっかりと恐怖のギミックに一役買っていて魅力的だ。

怖いだけでなく、幽霊屋敷が噂になるほどの田舎にはびこる行き詰まった遣る瀬無さも重く垂れ込める良質なホラー。最後に、坂城先輩が好きです。