登場人物の悉くが卑屈で歪んでいて、
諦観に支配されいる。
退屈で気怠い日常が延々と紡がれます。
何もなく、日常の中に紛れ込んでいる違和感すらも、
そのくだらない日常と言うものに呼吸を止められます。
ですがそれは、本当に呼吸を止められたのでしょうか?
退屈な日常が、あなたの目を濁しているだけかも知れない。
よく目を凝らせば、あなたが知らない所で、
それは今もちゃんと息づいている。
そして日常にすら零れだす、〝違和感〟と言うモノは何なのか。
違和感はそこにある。
見誤ってはならない。
出て来る人物、その悉くがある意味死んでいるからこそ、
生ないものの方がより活き活きと生きて来る。
倦怠と繰り返しでまどろむように過ごすあなたは、
日常の隙間に〝何か〟を目にするかも知れない。
ですがそんなものは早々に忘れてしまった方が賢明でしょう。
たとえ、もう逃げられないとしてもね。
ゲームセンターとコンビニも零時を回る前に閉まる鬱屈の行き場すらもない田舎の少年少女たちと幽霊屋敷を題材にした短編連作ホラー。
仰々しく脅かそうとする小細工は一切なく、日常と地続きの怪異が紛れ込こみ、気がついたらどこが始まりだったかもわからない描き方がとても高品質。
原因も正体も不明の幽霊と同じように、隣にいて無自覚に呪いをかけてくる友人、不器用な優しさが裏目に出る先輩など、ひともしっかりと恐怖のギミックに一役買っていて魅力的だ。
怖いだけでなく、幽霊屋敷が噂になるほどの田舎にはびこる行き詰まった遣る瀬無さも重く垂れ込める良質なホラー。最後に、坂城先輩が好きです。