【chapter5】民への返信

彼の自己紹介には30代前半であること、身長が177センチだということ、旅に関する職務に就いていることなどが書かれていた。


柔らかい文面からは人柄の暖かさが感じられる。


ぜひ、お会いしてみたいという言葉に頰が熱を持つ。


城への招待状を封に入れるとシーリングワックスで口を閉じた。


他にも数点のふみに返信を書くと再びバトラーを呼びゲイトキーパーに届けさせる。


民は招待がない時には城に立ち入ることを禁じられているが、文を預けることは許されていた。


受け取った文はバトラーによって開封され、安全が確認されたものが姫に届けられる。


その中から数通を選び出し、返信を書く。


それが再びバトラーの手を通り、ゲイトキーパーに渡される。


窓の外を覗いているとゲイトキーパーが大きな声で彼の名前を呼んだ。


すると、人混みをかき分けて背の高い男性が進み出た。


彼だ。


封を受け取ると男性は足早に人渦の中に姿を消した。


気がつけば窓の外がオレンジに染まっている。


間も無く王子がやってくる時間だ。


私はドレッサーに向かうとパルファムを手首に取り首筋を撫で上げた。

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