【chapter11】今時の文

「んんー!ふぅ。」


私は、パソコンの前で大きく伸びをする。


文字を紡ぐことを生業としている私は執筆の佳境に入っていた。


(一体、何時間キーボードを叩いているんだろう?)


指折り数えると少なくとも12時間以上はパソコンと向き合っている。


(やれやれ、そりゃ腰もお尻も痛くなるよね。)


私は、もう一度伸びをすると遅めの夕飯を食べるためにキッチンへ向かった。


お鍋にはあらかじめ作っておいた料理がある。


忙しくなるとついつい手が伸びてしまうお菓子を抑制するために、極力野菜たっぷりのメニューでお腹を満たすようにしているのだ。


執筆が始まると何もかも放り投げて集中してしまうので、作業に入る前に作り置きをしておく。


グツグツと音を立てる鍋からは美味しそうな匂いがしている。


(そろそろいいかなぁ。)


お気に入りのお皿に盛り付けるとテーブルに運び、火傷をしないようにフーフーしながら食べすすめる。


お皿の料理を平らげると作業に戻る前にメッセージアプリを確認した。


最近では仕事のやり取りもこれで行うことが多い。


画像も送れるし、レスポンスが圧倒的に手軽で早いからだ。


現在手がけている執筆に関わっているデザイナーから連絡が入っていた。


手早く返信すると他のメッセージにも目を通す。


彼からだ。


携帯電話の画面をタップすると、そこにはいつもと変わらない暖かく甘々な文章が綴られていた。

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