【chapter12】物憂い出逢い

彼とは、恋活アプリで知り合った。


とても礼儀正しい文面で送られて来たメッセージに興味と好感を抱く。


サイト内で70往復のメールを交わした後、実際に会う約束をした。


彼は大学で国文学を専攻し、私は文字を紡ぐことを生業としている。


互いにメールで思いを伝え合うことは楽しみであり心浮き立つものであった。


そして、しっかりと人となりを知った上での待ち合わせには何の不安もない。


迎えに来た彼の車に乗り込むとそのままホテルに直行する。


部屋に入りソファーでおしゃべりをしていると、次第に互いの声が潤いを帯び自然に唇が重なった。


互いの体に腕を巻きつけ体の一部を接触させただけなのに目が回るほどの気持ち良さを感じる。


そんな風に思っているのは自分だけだろうかと思いながら夢中で彼とキスをした。


離れがたい気持ちを抑えつつ交代でシャワーを浴びるとベッドで抱き合う。


彼の下半身にある硬いものが私の足に触れた。


彼は甘く優しく私の体を愛撫するとゆっくりと腰を沈める。


深い安心感と心地よさを感じていると彼がひときわ大きな喘ぎ声をあげ果てた。


私が不思議な愛おしさを感じて彼を抱きしめると、彼も私を抱きしめキスをした。


すると、ものの数分で彼のモノが硬さを増す。


「おかしいな…今までこんな風になったこと

なかったんだけどな…。」


彼は戸惑いと照れ臭さを交差させた表情で私を見つめると再び腰を振り始める。


明け方まで彼のモノは何度も復活し私の中に入って来た。


ほぼ眠らず繋がり続けた彼が仕事に向かうため、朝焼けの中ホテルを後にする。


寝ぼけ眼で運転する彼の左手は私の右手をしっかりと握って離さなかった。


体の関係から始まったこの出逢いと彼の優しさの狭間で私は物憂ものうさを感じていた。

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