ダル・セーニョ

とても詩的で、かつミステリを感じさせながら美しく着地する。まさに"彼"が着地しようとした位置に着地した短編だと思いました。
萩尾望都先生やその時代の女流漫画家（敢えてこの表現をしております）に描かせたら大変素敵な短編に仕上がるのではと夢想します……(*´∀｀)

「僕」の記憶と老女の記憶が悲しくも食い違う。どこか切なさをたたえたお話でした。

永遠の命題をぶつけられたようでした。仮に自分が主人公だったら、どんな選択をしたのだろうかと考えてしまうほどです。答えがないからこその葛藤、答えを出さなければならないという苦悩とが読後に頭を擡げました。こうしたことが現実に身近にある人には、かなり刺さる作品なのかなと思います。まあ、フィクションとして割り切るのも一つの選択だと思いますが。

さて、そんな中での本作の特筆すべき部分としては、やはり心理描写の巧みさでしょうか。理屈っぽくなく、かといって衝動的でもない。登場人物たちのある種、曲がりなりにも完成してしまった「心理」が、その言動を自然たらしめていたという印象です。常人でもなにかしらの拍子に…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（105文字）

・こんな人におすすめ
　「寄宿舎」に興味がある人　蠱惑的な文章を好む人

・個人的にここが良い！
　キャラ・文体

・読後の満足感
　まん丸　(O_O)

・感想
　気品のある文体に着目してほしいですね。ぜひ噛み合わないやりとりや明かされる事実を見届けてください。