あなたにはシンバルの音が聴こえますか?

ご縁があり、この物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきます。

本作は海沿いの街にひっそりと佇んでいたファッションホテル『ピシナム』で働いていた青年が、かつて働いていた時に出会った少女との出来事を思い返すところから始まります。その後に繰り広げられるのは、顔も合わせないままに行われる手紙のやり取り。二人はその中で、恐る恐る互いへと踏み込んでいきます。

青年の彼に内包された苦悩や不器用さ。少女の秘密と、ある出来事によってその内側に宿ってしまった、強烈な孤独。それらが圧倒的な表現力によって書き表されており、気がつくと読み終えておりました。没頭してしまったこの感じは、まるで海に引き摺り込まれてしまったかのような気分です。
ラストの展開は怒涛ながらも、「何か」があったという余韻に浸れるような。もちろん言葉にすることもできるのでしょうが、それは是非、読んでみて、そして感じていただきたいものです。

他の皆さまも是非読んでみてください。

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