この作品の魅力は美しいほど聡明な年下の男のズルさと、その魅力の「沼」に抗いながらも自ら足を踏み入れてしまう主人公の揺れ動く心模様にあると思います。
主人公は自ら高嶺の花を演じる魅力的な女性ですが、どこか冷めていて心渇いているように思います。
そんな彼女が出逢ったのはカフェで働く年下の男。
この物語が魅力的なのは恋の主導権の見せ方です。これまで追いかけられる恋ばかりしていた主人公が年下の男に恋の主導権を奪われてしまう。
それまで築き上げた高嶺の花である自らの城を、この男性は甘く優しく、そして美しく壊し、自らの沼に彼女を引きずり下ろします。
物語の後半、二人は夜の海へ向かいます。
距離を縮めたい主人公と、彼女の気持ちを知りつつ、決して自ら彼女へ近づかない年下の彼。この二人の心模様が夜の海の静けさと、暗く深い、恋の深淵の沼に堕ちる主人公の心理が重なり引き込まれました。
ニクいほど魅力的な「沼らせ男」を体感できる素晴らしい良作でした。
(「沼らせ男/沼らせ女」 恋愛ショートストーリー特集/文=カフカ)
☝これに尽きます。
沼らせ男、沼らせ女の企画に参加されているこの作品ですが、今回は男性の方です。
そのね、男性が泉って言うんですけど、もうこれは完璧です。まさに沼らせ男。まだまだ三流どころか十流くらいにいる成長中の作家にはなかなか書けませんよ。
性格がしっかり書かれていて、主人公である伊織(僕の連載作品にも伊織がいるんですけど、性格は全然違う笑)の心の揺れ動きなども細やかに描かれていて、何というか、すごい読了間味わえます。
足を地につけ、溺れもがく。なんか、色々と純文学みたいでした。
純文学はあまり読まない分野ですが、この作品はそれに近いかもしれません。けど、好きです。
完璧なほどの鎧を身にまとえば、自分を守ることはできても、自分をさらけ出すことはできない。
その鎧をつい、するりと脱ぎ捨ててしまいそうになる、沼らせ男。
主人公の伊織は、夜カフェで出会った年下男子の泉の前では、鎧を脱ぎ捨ててしまいそうになる。彼の言葉はいとも簡単に、本来の伊織に触れてくる。
その名のごとく、美しい泉に身を沈めるがごとく、伊織は泉に身を沈めてしまうのか。
それとも-。
平的に、泉君は完璧な沼らせ男だと思います。(故意なのか故意じゃないのか、恋なのか恋じゃないのか、もう全く分かりません(>_<))
ぜひ皆様も、泉君の泉(【沼】と呼ぶには美しすぎます)にどっぷり嵌ってみてくださいませ♪