文字を追え! 熱い音色が聴こえるはずだ☆

 とかく、アーティストと呼ばれる人たちは馬鹿が多い。しかも「大」がつくほどの馬鹿だ。しかし、現状に不安を抱いたり、踏み出す一歩を躊躇したりすると、彼らは単なる馬鹿に格下げとなる。馬鹿と大馬鹿の違いは、その辺の差にあるのではないかと愛宕は思う。
 それはさておき、作中に登場するバンドメンバーは、誰もが大馬鹿だった。しかし、主人公の蒲田さんは、女の子なら誰しもが一度は抱く恋心のせいで、大馬鹿から馬鹿へ変わろうとしていた。欧米と違い、日本人は保守的な国民だ。だからとは言わないが、日本人だったことで国民性マジョリティの波に呑まれ、一度は人生という海原に溺れかけてしまう。個性は残そうと工夫しても、孤独だけが残る結果へと導かれてしまうのだ。
 そこに「待った」をかけるのが、彼女を取り巻く数少ない仲間たち(職場の上司含む)だった。時に間接的に、時に直接的に彼女へ寄り添って、恋心から生まれた足枷を外そうと試みる。遂に解放されて、大馬鹿となった彼女の姿を脳内イメージした時は、必ずや読み手の全員が爽快感に包まれることだろう。
音楽のジャンルは好き嫌いの分かれる攻撃的なものだが、作者さまの綴る筆っぷしは優しく繊細で、琴線に触れるような名言も多い。そのギャップもまた魅力の一つ。

才能を発揮しようとしないのは、錆や黴が生えて腐るだけです。是非、この作品を読んで「俺(わたし)のバカヤロー!」と叫んで下さい☆

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