あの夏、わたしは花火を見て、少し泣いた。

思春期に触れる「死」は繊細で、言葉にしたり表現したりするのが難しいものです。本作は「人は死ぬと打ち上げ花火になる」というシュールな設定によって、それを捉えることに成功しています。

タイトルから物語の結末は想像できるのですが、そこに至るまでの「わたし」の心の変化が見どころです。関わりの少ないクラスメイトの男子という距離感がかえって「死」を見つめるのに適しているようで、作者のセンスを感じます。

夏、花火、クラスメイトの死……。エモい要素で構成された、じんわりと胸の中で響く物語です。

(カクヨムWeb小説短編賞2021 “短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)

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