あの夏、わたしは花火を見て、少し泣いた。
- ★★★ Excellent!!!
思春期に触れる「死」は繊細で、言葉にしたり表現したりするのが難しいものです。本作は「人は死ぬと打ち上げ花火になる」というシュールな設定によって、それを捉えることに成功しています。
タイトルから物語の結末は想像できるのですが、そこに至るまでの「わたし」の心の変化が見どころです。関わりの少ないクラスメイトの男子という距離感がかえって「死」を見つめるのに適しているようで、作者のセンスを感じます。
夏、花火、クラスメイトの死……。エモい要素で構成された、じんわりと胸の中で響く物語です。
(カクヨムWeb小説短編賞2021 “短編小説マイスター”特集/文=カクヨム運営)