あなたの願い、残酷に叶えます。

西羽咲 花月

第1話

薄暗い部屋の中、6人の男女が1つの机を囲んで立っていた。



影に隠れてそれぞれの顔は見えない。



どんな表情をしているのか。



どんな顔をしているのか。



ただ、足元に差し込んでいる外からの明かりのおかげで着ている制服が見えて、性別が判断できる状態だった、



6人は同じ学校の生徒のようで、みんな一様に灰色のスカートか、灰色のズボンを着ている。



誰も、何も言わなかった。



ただ、6人分の荒い息が聞こえてくるばかり。



部屋の中の空気はピンと張りつめていて、指先ではじけば音が鳴りそうな気配がある。



みんな、誰かがはじめに話しはじめるような気配があった。



でも、まだ、誰もなにも言わない。



ただただ、なにもない時間だけが過ぎていく。



それから更に5分ほど経過したとき、不意に部屋の中に泣き声が聞こえてきた。



それは6人の内の1人の泣き声のようで、女子のものだとすぐにわかった。



照らされている足のひとりのものが、小刻みに震えている。



どうやらこの子が泣いているみたいだ。



それでも、この子に声をかける者はいない。



呼吸音と泣き声だけが聞こえてくる部屋の中。



それはどう考えても異質な空間だった。



この6人は一体どんな関係なのか?



なぜ暗い部屋に輪を描くようにして立っているのか?



なぜ無言のままなのか。



なぜひとりだけ泣きだしたのか?



謎が加速していく中、不意に声が聞こえてきた。



「今日……」



その声は女のものだった。



これも6人の内のひとりの声のようだ。



若く、張りのある、そして芯の強そうな声。



「……あたしたちがやったことは、誰にも話さないって約束して」



声が緊張に包まれていた。



しかし、部屋の空気は少女が話をすることで少しだけ和らいだ。



相変わらず、返事はない。



でも、部屋の中の空気が少女の言葉を肯定しているように感じられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る