第9話~真美サイド~

高校に入学してからのあたしは正直冴えない存在だった。



元々地味で目立たないタイプだったけれど、高校に入学するとそれが加速した。



その原因になったのは中学までの友人がこの高校にはほとんどいなかったからだった。



それでも1年生の頃は頑張って自分からクラスメートに声をかけたりしていた。



友達が欲しくて。



1人じゃ寂しくて。



だけどクラスメートたちはあっという間に自分たちでグループを作ってしまい、あたしが入る余地はなかった。



声をかければ会話はしてくれる。



だけど、向こうから誘ってくれることはない。



そんな状態が続き、もしかしてあたしが一緒にいたら邪魔なのではないかと思い始めてしまった。



もちろん、そんなのあたしの想像だった。



しかも、とびきりマイナス思考の想像だ。



だけどあたしが近付けば会話が止まるのは事実だし、少し無理して笑っているように見えることもしばしばだった。



そうなってくると、もうこちらからも声はかけられなかった。



これ以上相手に迷惑をかけるわけにはいかない。



会話を遮るわけにもいかない。



クラスメートたちがあたしから離れていくことは必然的な出来事だった。



あたしは1人で教室にいる間、マンガや小説を読むようになった。



どれもスマホ一台で読むことができるから、とても手軽だった。



だけど、どれだけ集中して本を読んでいる気になっていても、クラスメートたちの笑い声や楽しそうな声は気になった。



たびたび集中力が途切れて、どこを読んでいたのかわからなくなる。



それでも、2年まではこうしてあたしもクラスの一員として過ごしていることができたのだ。



害のない暗いクラスメートとして。



でも、3年生になると状況が少し変わった。



今年に入って新しいウイルスが発見され、様々な行事が取りやめになったのだ。



それは学校行事だけではない。



街での恒例の行事もなくなってしまった。



クラス内には欝々とした重たい空気が流れるようになった。



自分たちもいつ感染するかわからない。



遊びに行けない。



見えないストレスが蓄積されていく。



そんな中、あたしは恰好の餌食になった。



「ぎゃはははは! クッサー!」



紗弓があたしの頭上でゴミ箱を逆さまにして叫ぶ。



「やば! 紗弓ひどー!」



そう言いながらも笑っているのは景子だ。



2人は手を叩き、体をくの字に曲げて笑い転げる。



この2人からのイジメが始まったのは3年に上がってすぐのころからだった。



前年度から続くストレスを解消するために、ここぞとばかりにあたしを傷みつける。



あたしはなにも言えずにただうつむいていた。



だって、この学校に入学してから友人なんていないから。



助けを求めることなんて、誰にもできないから。



だから、ただただ、我慢する……。

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