異世界が舞台では出せない生々しさ

ファンタジーにも様々な種類や系統があり、最も大雑把な枠組みで仕分けるとしたら「異世界ファンタジー」か「現代ファンタジー」か、となるかと思います。
主流なのは圧倒的に異世界ですが、本作は舞台が現代だからこそ最大限の魅力が出る作品だと感じました。
異世界モノでこの密度は、恐らく不可能です。

まず、登場人物たちの運命がどこかで微かに交わり、すれ違い、噛み合っていく群像劇として、非常に完成度が高いです。
人生が狂っていく生々しさ、そこから希望あるいは絶望を手にする過程、その全てが、実際に起こり得ることだと想像できてしまうものでした。
そこへ「寿命をお金に換えるカード」というファンタジー要素が綺麗に混ぜ合わされ、鮮烈な魅力を放っています。

凝った設定よりもストーリーや人間ドラマで殴られたい時にお薦めの、珠玉の現代ファンタジーです。

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