ソウル・カード『命の値段』

甲斐央一

全てのはじまり

第00話 始まりのはじまり

『あ~あ退屈だ。毎日毎日、人間どもの魂の世話ばっかりで飽き飽きだ。なんでこうも人間ってヤツは欲が深くて、自分勝手なのだろうか? 何度も生まれ変わっているんだから、いいかげんに反省して成長しろよ! って言いたくなるぜ……本当に、訳が解らねぇ……』


 場所は天界。独り言をブツブツ呟いている者がいた。その者の名は“ゼル・ラグエル”という。一応は神である。神といっても幅広い。階級が九つ有り、最高神~天使~死神と様々だ。


 ゼルの階級は第八階級に在り、人間の魂を天界に導く天使の一つ上にあたる。一応は死神の仕事もこなせるし、天使の階級の上だから、せいぜい大天使アークエンジェルで、人間達が崇める神には程遠いかも知れない。しかしながら、下級ではあるが、この大天使は特別な位置にあるという。下位でありながらも力・能力は上級にも勝るとも劣らないとも言われている。


 そんなゼルがある日重い腰を上げた。自分の役職である『裁きの門』を一括出来る、重厚な椅子からユックリと立ち上がった。この場所は、死者の魂を判定し、天国、地獄の行き先の審判の場所の入り口でもある【狭間の世界】。見渡す限り、この門からは果てしなく続く魂が列を作って並んでいる。永遠に続くのか?と疑いたくなるぐらい長く続いている。


 何時まで、この魂の処理を相手にするのか、考えるだけで、目眩がしてきそうだ。

しかしながら、此処は天界。そんな、悠長な事は言ってられない。この場所に住む住人にとっては、この永遠に行う作業は当たり前の事だから……


『ふぅ~何だか少し疲れたな……少し、下界へ降りてくるぜ……』


 と、側にいる天使達に一言いうと、相手の返事も聞かず、自らの四枚の白く大きな翼を広げ、飛び立って行った。上級になれば背中の翼の枚数が増えてくる。一般の天使達の翼は二枚。四大天使といわれる天使達の翼は六枚に対し、ゼルの翼は四枚。それを見るだけで、ゼルの位が上級なのかは一目で判断出来る。かなり上級である。


「——チョ、チョッと、チョッと、何処へ行くんですか?——」

「本当に、あの御方は全く自分勝手なんだから……人間とあの御方、どちらが自分勝手なのかしらねぇ?……全く……」

「まあまあ、そう言わない。あの御方にも何かお考えがあるのでしょうから?……たぶん、きっと?……恐らくは……う~ん……そうじゃない?……」


 残された天使達はそう言いながら溜息とも取れる言葉を呟き、自分達の仕事を続けた。


 遥か下界(人間界)では、多くの人々達が忙しそうに自らの欲望の為に、忙しく動き廻っている……。


 金・物・権力・欲しい物は無限大だ。それらを手に入れる為に、何を失うのか知っているのだろうか?……失った物や、者は二度と手に戻らないというのに……。










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