ファンタジーにも様々な種類や系統があり、最も大雑把な枠組みで仕分けるとしたら「異世界ファンタジー」か「現代ファンタジー」か、となるかと思います。
主流なのは圧倒的に異世界ですが、本作は舞台が現代だからこそ最大限の魅力が出る作品だと感じました。
異世界モノでこの密度は、恐らく不可能です。
まず、登場人物たちの運命がどこかで微かに交わり、すれ違い、噛み合っていく群像劇として、非常に完成度が高いです。
人生が狂っていく生々しさ、そこから希望あるいは絶望を手にする過程、その全てが、実際に起こり得ることだと想像できてしまうものでした。
そこへ「寿命をお金に換えるカード」というファンタジー要素が綺麗に混ぜ合わされ、鮮烈な魅力を放っています。
凝った設定よりもストーリーや人間ドラマで殴られたい時にお薦めの、珠玉の現代ファンタジーです。
命は大事。
でも命を維持するにはやはりお金が必要。
現代ではこの二つの天秤が特に重要な要素になってます。
この物語で描かれるのはそんな命題をテーマにした三つのストーリー。
神様から与えられた、寿命を換金できるカードを手にした、三人の主人公。
誰もが死を目前にリスタートをきれるチャンスをもらいます。
この三人の主人公たち、それぞれがひどい過去を背負っています、それこそ自分の命をあきらめてしまうほどの。
チャンスを与えられた彼らが、そのカードを手にどのような生き方を、お金の使い方をするのか。
ここに人間の業というものが現れてきます。
共感するのか、失望するのか、感動するのか、物語を読んでいくといろんな感情に包まれていくと思います。
それこそがこの物語の最大の魅力なのだと思います。
ぜひ読んでみて、じっくりと考えてみてほしい作品です!
ここに自由にお金を引き出す事ができる一枚の不思議なカードがあります。
その代価は、自分自身の寿命です。
あなただったらどうしますか?
この物語は、生きていくことに疲れ死を選ぼうとした三人の人生が描かれています。
それぞれが人生をやり直すチャンスをもらったのですが、そのカードで得たお金の使い道は人それぞれ。
三人の決意と行動とは?
最後まで目が離せず、読み終わった後は、「どう生きるか?」ということを深く考えさせられ大切なことを教わった気がします。
そこに織り交ぜられた人間関係の繋がりにも感動があります。
この物語を通して作者が伝えたかったことは何か?
そのメッセージをあなた自身で感じて下さい。
あなたの心にも深く突き刺さるはずです。
人生をもがき苦しみながら生きていく、三人の男女。
彼らの前に現れた神・ゼルが渡した「ソウル・カード」とは、まさに彼らの命を金額に変えるカードだった!
神が登場するファンタジーではありますが、根本はあくまでも根の深い人間ドラマ。
三人の事情は異なっていて、それぞれが泥臭く息切れしそうな日々にもがきながら、懸命に、命を削りながら生きています。
その命が、お金に変わるとしたら?
いつどこで、なんのために、いくらのお金に変えるのでしょうか?
お金に関わる大きな不幸を抱えた三人の行動とは、決意とは。
そして、カードがもたらす三様の結末とは。
最後の一行まで目が離せない、見事な人間ドラマが繰り広げられます。
命の価値について、深く、深く考えさせてくれます。
小説としてももちろん読み応え十分ですが、ドラマや映画が取り上げそうなテーマでもあります。ぜひドラマ化・映画化してほしいです!
路頭に迷い、自ら命を絶とうとする人間の前に神が現れる。
寿命を現金に換えられるカードを神から与えられた彼らは、人生をやり直せるのか?
お金によって人生を狂わされた人々の物語です。
キャバ嬢に貢いで破滅した男性、親戚の借金の肩代わりで風俗に売られた女性、会社経営に失敗して破産した男性……
三者三様、カードを手にしてからの人生の変遷がオムニバス形式にて綴られていきます。
主人公たちの心理や言動にリアリティがあり、壮絶な展開には息をも忘れるほどでした。
自分の寿命を削らなければならない究極の選択が招くのは、幸福なのか不幸なのか。
複雑に折り重なる人間関係の綾と、散りばめられた伏線が見事に回収される圧巻のラスト。
まさに因果応報ですが、清々しさと温かさの残る読後感でした。
とても面白かったです!
タイトルが示す通り、命の価値を問うヒューマンドラマです。
命を投げ出そうとする者に翼を纏った神、ゼルが現れて人生をやり直すことが出来るアイテム『ソウル・カード』を渡します。それは寿命を失う代わりにお金を引き出すことが出来る代物でした。渡された者は果たしてどういった使い方をするのか。そしてゼルはそれを傍観し、何を思うのか…。
深いテーマ性で命の価値、生きる意味を問います。話を惹きつける仕掛けや、わかりやすい設定はフックが効いていて、ついつい物語に引き込まれてしまいます。
キャラクターの掘り下げも深く、息づいている感じが十分に伝わります。内面の心理描写も丁寧でキャラクターに感情を傾けることでしょう。
人生について考えさせる現代ファンタジードラマ。巧みなストーリーテリングに、刮目してください!
神から齎された寿命を金額に変えるカード、『ソウル・カード』──。この物語はソウル・カードを与えられた者達の行動を辿るフレームストーリー型の物語です。
人間と金は切っても切れない関係であり、その因果に翻弄されるのが常……。当人が望むと望まざるとにかかわらず必ず人生に絡んでくる。物語の登場人物はそんな風に人生を狂わされた人達……。
ソウルカードを与えられた者達の過去とその結末を描いているのですが、これが本当に深い……。お金こそ題材になっていますが、この作品の本当の題材は『人の生きる意味とは?』です。
どんな環境にあろうと選択するのは人間……流されるままも、変えようとするのも結局は自分の選択でしかない。
作中登場する人達の運命はリアルそのもの……だからこそ作品から問われている気がして考えてしまう。人が困難の中で生きる意味を。
バッドエンド、ハッピーエンド、章ごとに変化する大人寄りのヒューマンドラマ現代ファンタジー。大人なら是非とも読んで欲しい傑作です!
物語は、今まさに自殺しようとしている登場人物達の前に、神であるゼルが現れ、自分の寿命と引き換えにお金を引き出せるソウルカードを手にすることから始まりす。
登場人物達はソウルカードを手にし、それぞれの人生を振り返りながら、これからどうしていきたいかを考える事になりますが……。
それぞれの登場人物達の想いや情景が巧みに表現された文章で、読む人の心を掴む作品です。美しい自然描写や丁寧な背景など物語は作り込まれており、登場人物達に思わず感情移入してしまう程、様々な試練が待ち受けています。
この作品を読みながら、自分ならどうするか?どう試練に向き合うか?を考える機会となりました。
とてもおすすめの作品です。