スカウト

スカウト

年末年始

僕は年明けを智遥と一緒に過ごしたい、もし会えないにしても電話で年明けの鐘をを刻みたいなと考えていた。智遥にラインをした。

大晦日って何している予定?

家にいる予定だけどたっくんどうしたの?

大晦日にカウントダウンを智遥と一緒に過ごしたいなって思ってラインをしたよ。

そっか、私の家でら毎年年越しそば食べているけれど食べに来る?

でもお父さん、お母さんに迷惑じゃない?

大丈夫だよ。家族にたっくんのこと紹介したいなって思っていたからどうかな?

じゃあ何時頃、尼阪駅に行けばいいかな?

午後9時くらいかな。詳細はまたママに聞いておく。

僕は智遥の家族に紹介してもらえることの嬉しさとどのような振る舞いをしたらいいのかと考えていた。

何も持たずに彼女の家に行くのは失礼、何を持っていけば喜ばれるのか。智遥に住所を聞いてアルバイト代でお歳暮買った方がいいのか最善の策を考えていた。

自分がその立場だったらどう思うかと考えた。挨拶もしていない何処の馬の骨か分からない人からお歳暮をもらってもこれは誰からの贈り物なのか、誰宛に送られてきたのか分からないため止めよう。ショッピングモールで菓子折りを持っていくのが無難かなという答えに行きついた。

大晦日前日、僕は蓑谷駅にあるショッピングモール行ってお歳暮コーナーで色々と見ていた。お菓子にしようかそれとも他のものの方が好まれるのか考えていた。店員さんにお歳暮人気を尋ねた。

今年はバタークッキーが特に売れています、どの世代からも好評でオススメですよ。

店員さんが言うのなら間違いはないとバタークッキーの詰め合わせを買って僕は家に帰った。

大晦日、僕はテレビを見ながら晩御飯で宅配寿司にオードブルを食べていると智遥からラインがきた。

電車の時間もあるから尼阪駅に午後9時しっかりに来なくても大丈夫だよ。慌てずにゆっくり来てね。

現在午後7時、スマホで電車の時間を調べていた。5分前に着く電車と15分後に着く電車しかなく、僕は人の家にお邪魔するのに遅れるのは失礼だ。5分前に着く電車に乗ろうと決めた。

晩御飯を食べて家族に出かけてくると伝え、ベージュのパーカーに着替えて菓子折りを持って尼川駅に向かった。

電車に乗って尼阪駅に着くとホームに水色のパーカーにポニーテールをしている女の子がホームで立っていた。顔は見えなかったが智遥だと確信した。

たっくん〜、早かったね。もう1本後のやつでもよかったのに。その手に持っているもの何?

ご両親に挨拶させてもらうのに何も持たずに行くのは失礼だと思ってバタークッキーの詰め合わせ買ってきたけれど大丈夫だった?

智遥は笑っていた。たっくん律儀だね。

どうして笑うの?もしかしてクッキーじゃない方がよかった?

私の家みんなクッキー好きだから問題ないよ。ご両親に挨拶って結婚の挨拶じゃないのにそんな畏(かしこ)まらなくていいのに。さぁ家に行こう。

僕と智遥は改札を抜けて智遥の家に向かった。

「パパ、ママただいま〜。紹介したい人がいるの」

お父さんとお母さんがやってきて僕は初めまして智遥さんとお付き合いさせてもらっている榎本拓実といいます。これつまらないものですがどうぞ。

堅苦しい挨拶はいいから上がって。

お父さんは智遥に話しかけていた。拓実君はいつもこんな律儀なのか。

智遥はニコッと礼儀正しくていい子だよ。

母さん、そばお願い。

お口に合うか分からないけれど拓実君もお蕎麦どうぞ。すみません、いただきます。

お父さん、拓実君からクッキーもらったから後でいただきましょう。拓実君も食べてね。

僕はお蕎麦をすすっていた。美味しい、お母さん美味しいです。

拓実君、それ私がいちから打ったやつじゃなくてスーパーで買ってきたやつを茹でただけだよ。拓実君かわいいね。

智遥はたっくんは癒しキャラでチアリーディング部でもみんなからかわいがられていて弟みたいな存在だっていう子もいるくらいだよ。

お父さんも天然というか悪げなくいう感じがかわいいな。どうして今回クッキー持ってきてくれたの?

彼女の家にご挨拶行くのに何も持たないで行くのは失礼だと思いまして智遥さんに住所を聞いてお歳暮という形で送った方がいいのかなとも思いましたが何処の馬の骨か分からないもののものは受け取れない。そもそも誰宛に送られてきたのか分からないと思いまして今回クッキーを持ってきました。

拓実君、君は今日結婚の挨拶に来たのか?

いえ、違います。智遥さんと一緒に新しい時を刻みたいと思いまして連絡したところ家族に紹介したいからと招いていただきました。

お母さんは智遥の耳元で拓実君、律儀でかわいい子だね。優しい雰囲気が漂っているね。

いつも私の事を1番に考えてくれる優しくてかわいい子だよ。たっくんにはいつも助けてもらってもいるよ。

そっか〜、どんな所に惚れたの?

ちょっと揶揄からかうとスグに顔が赤くなっちゃうウソがつけない正直だなっていつも思うの。

2人が幸せならお母さんそれでいい。

そして桃川家の皆さんと共にクッキーを食べていた。

たっくん新年迎える前に一緒にお風呂入ろう。

え、いやお風呂先に入ってきていいよ。

いいから早く行くよと僕は浴室に連れて行かれ、お風呂に入った。

僕は頭と身体を洗って湯船に浸かる時は目を閉じていた。ここで目を開けてはならぬと自分に言い聞かしていた。

たっくんお風呂で寝たらダメだよ。起きて。

そうは言っても今の僕は目を開く訳にはいかない。

僕は頑なに目を閉じなければと思っていると頭がふわっとして意識が朦朧もうろうとしていた。

1時間後、僕は目を覚まして横には智遥がいた。

もう年越しちゃった?

まだだよ。それよりたっくん大丈夫?どうしてお風呂で目を閉じていたの?

僕は智遥の裸を見たらいけないと思って出るまで待ってからお風呂を出ようとしたらこうなって……。

そんなこと別によかったのに。私から声をかけておいて拒否をするのはおかしいでしょ。自分の体調を悪くしてでも私のためにって考えてくれてありがとう。イジワルしてゴメンね。

ホントだよ。刺激的なイジワルは止めてよ。

でもホントは目を開いて見たかったでしょ?

違うと言ったらウソになるかな。

たっくんも男の子だね。正直でかわいい。

意識も戻ったしテレビのカウントダウン見よう。

「3、2、1、あけましておめでとう〜」

僕はじゃあこれでおいとまさせてらもらいます。お邪魔しました。

智遥は僕の腕を掴みもう終電ないよ。帰るってどうやって帰るつもり?

僕は家まで歩いて帰るから大丈夫だよ。

危ないからダメだよ。今日は私の家に泊まっていきな。私と一緒に寝よう。ヘンなことしないでね。

ホントにいいの?じゃあお言葉に甘えて。泊まらせてもらいます。智遥、ありがとう。

そして僕は智遥の部屋で寝ることになったが緊張して全く寝付けない。このまま夜通し起きていることになるだろうなと覚悟していた。

智遥の寝顔を見るとかわいい。スマホで音無しカメラのアプリを入れて智遥の寝顔を撮影した。結局僕は一睡も出来ずに夜が明けてしまった。

たっくんおはよう。クマ出来ているけれど寝れなかった?

僕は隣に智遥がいると思うと緊張して一睡も出来なかった。夜通し起きていることはたまにあるからそんなきにすることじゃないよ。

そっか、じゃあ着替えてくるから先にリビングに行っていていいよ。覗かないでね。

僕は智遥に言われるがままリビングにいってお父さんとお母さんに新年の挨拶をした。

しばらくして智遥がやって来てみんな揃っておせちとお雑煮を食べた。お腹いっぱいになって智遥は再び部屋に戻った。1時間後、振袖着て現れた。

たっくん、似合っているかな?

その姿に僕は思わず現代の織姫様だね。

ふふふ。たっくん、織姫様って今日七夕じゃなくてお正月だよ。じゃあお参り行こうか。

僕と智遥は尼阪神社に行くと真海と実希を見つけた。声をかけてくるのかなと思ったら知らん顔をされた。真海、目合ったのに無視するの?

2人の邪魔をしたらいけないと思ってさ。実希と入口で会って智遥と拓実君と会ったら声をかけないようにしようっていう話をしていて。

そんなこと気にしないよね?たっくん。

僕はいつも真海や実希にお世話になっているから挨拶しようと思っていたのに……。真海、実希あけましておめでとうございます。

拓実君、智遥あけましておめでとうございます。それより智遥の振袖かわいいね。

ありがとう。たっくんからは現代の織姫様って言われて今日は七夕じゃないよっていう話していたよ。

真海は拓実君の言っていること強(あなが)ち間違っていないと思うよ。同じ女の子として見ても似合っていてかわいいと思うよ。実希はずっと口をあけて見蕩(みと)れていたよ。

ちょっと真海、恥ずかしいから止めてよ。

僕はみんなでお参りに行こうと声をかけた。

4人でお参りをした。その後、真実に僕のスマホを渡して智遥との2ショット。他の参拝客の人に渡して4人で写真を撮ってもらった。

僕はまた新学期になったら会おうねと尼阪神社を後にした。


バレンタイン

冬休みが終わり、3学期が始まった。僕は元日以来の尼阪線に乗って久しぶりに乗ったような気がした。周りには仕事に向かうサラリーマン、制服を着た学生がそれぞれの場所に向かって電車に揺られている。

「たっくん、たっくん、たっくん聞いている?」

智遥、真海おはよう。どうしたの?

どうしたのって聞きたいのはこっちだよ。窓から車窓見て何を考えていたの?

僕は今日から3学期でしょ?何かまたいつもの光景に戻ってきたなって見ていたいただけだよ。

たしかに冬休みに比べたら人が多いね。来月、何が欲しいとかある?

僕は思わず欲しいもの?2月って何かあったっけ?

智遥は何ってバレンタインだよ。そんなこという子には何もあげないよ。それでもいいの?

何か欲しいです。お願いしますと頭を下げた。

素直で宜しい。それでたっくん何が欲しい?

急に言われてもな……。またラインで送るね。

まぁいいや。ちゃんと考えておいてね。

僕は蓑谷駅で降りて歩いて学校に向かっている途中に智遥から何かもらう、お金をいくら払ったからホワイトデーで何を返したらいいのか分からない。ラインで送っておくねとは言ったもののこういうことはラインで言うよりも直接言った方がいいな。

学校帰りに蓑谷駅で真海と智遥と出会った。

真海は私も拓実君にあげようと思うけれど何が欲しい?それとも智遥のだけで私のはいらない?

真海、そんな事ないよ。智遥、今朝の話だけど学校にいる間ずっと考えて僕は手作りのものが欲しいな。忙しくて大変でも大丈夫?

1ヶ月あるから時間見つけてやるから大丈夫だよ。たっくんのために私、一生懸命頑張るね。何をもらえるかは当日までナイショだよ。真海はどうする?

私はクッキー作ろうとかな。拓実君クッキー好き?

家にあったら何枚でも食べるくらいだよ、

智遥はクッキーで思い出した。ふふふ。

智遥どうしたの?クッキー嫌いだっけ?

そうじゃなくて大晦日にたっくんがね……。

智遥、あの話を真海にしないで。恥ずかしいから。

たっくん、シーっだよ。智遥は僕の口に人差し指を当てて喋れらせないようにしていた。

智遥、拓実君がどうしたの?気になる。

たっくんあの話かわいいよ。喋っていい?

もう話す気満々の人に今更横に首を振っても話すだろうと思い、いいよと答えた。

実はね、大晦日にたっくんが私の家にカウントダウン一緒にしようって来てくれた序(ついで)に家族に紹介するのを兼ねて家に来てくれて菓子折りを持ってきてくれて中身がクッキーだったけれどその理由が彼女の家に行くのに何も持ってこないのは失礼だからって持ってきてくれてね。今日持ってくるか家にお歳暮として郵送するべきか考えて持ってきたみたいだよ。それで私のパパがたっくんに君は今日は結婚の挨拶に来たのかって言っている姿が面白くてかわいいなって思って話を聞いていたよ。真海どう思う?

智遥のお父さんに始めて会ったのなら結婚の挨拶だと思ってもおかしくないと思う。でも拓実君が智遥のご両親に失礼のないようにって思って菓子折りを持ってきてくれたと考えるとかわいいね。そこまで畏られてどうしたらいいのってなりそう。

私もパパもママもみんなそうなっていた。たっくんが帰ってからパパもママも律儀でかわいい子だねって言っていて好感度は高いよ。

僕のした事って間違っていたのかな……?でも悪いふうに思われていないのならいいか。

あまり堅苦しい感じになると出迎える側も萎縮しちゃうから程々でいいよ。またたっくんに家に来て欲しいって伝えておいてって言っていたよ。

僕はまたお邪魔されてもらいますと話していた。

あ〜、早くバレンタインにならないかな〜。

真海と智遥は顔を見合ってクスッと笑っていた。

いいこと思いついたと真海は智遥に小声で話していて智遥は頷いていた。それいいねと何か納得していた。

たっくんバレンタインの日、どこか会議室貸し切ってパーティやろうかなって思うけど来ない?

僕はパーティって誰が来るの?

たっくんと私たち蓑川女子高校チアリーディング部のメンバーだよ。絶対みんなかわいがってくれるよ。

僕はいいけれどみんなに聞いてみてだね。

大丈夫だよ。そこはキャプテンの私が権力を行使してみんな集めるから気にしないで。

権力行使ってなると来たくないのに来させられる子に申し訳ないから強制というより任意で集まりたいっていう意見が集まればパーティやろう。

真海はでも拓実君はパーティして欲しい方向だね。

こうしてバレンタインの日にどこかの会議室でバレンタインバーティが行われることが決まった。

僕はこの時、智遥から手作りの何かをもらって真海からクッキーもらって他のメンバーからチョコかクッキーをもらってとなるとお返しするの大変だなと勝手に妄想を広げていた。

そしているうちに2月に突入し、智遥からラインがきた。木曜日のバレンタインの日は午後4時に蓑谷駅に集合。目的地は私たちが誘導するね。

僕は日時を指定するのならばどこに行くのか教えて欲しかった。真海に聞いてもナイショとしか来ない。何を考えているのか全く分からない。

バレンタイン当日、尼阪線の電車でも智遥と真海に今日どうするのと尋ねても夕方になれば分かると一方的で何も答えてくれない。

ナゾのまま蓑谷駅を降りて学校に向かった。これが共学なら下駄箱に義理チョコが入っていたりとかあるのかな。夕方になれば何かしらもらえると思うと他のクラスメイトには今日のことは口が裂けても言えない。言った瞬間、尋問のように聞かれて卒業するまでずっと言われるのが目に見えているからだ。

僕は授業が終わって集合場所でもある蓑谷駅に向かった。この後何が起きるのか想像も出来なかった。

たっくん、お待たせ。じゃあ行くよ。

智遥、どこに連れて行くの?もう教えてよ。

智遥は僕の手を握ってここに小さな体育館あったかなと思うような場所に連れて来られた。

ここで何をするの?10人入ればいっぱいになりそうな所で出来ることは限られているだろうな……。

たっくんは中に入ってちょっと待っていて。

待っていて?ということは今から何かが起きるということなのか。真海や他のメンバーはどこだろう?

舞台裏から音楽が流れてきた。何これ?誰が音楽を流しているの?

智遥や真海、そしてチアリーディング部の人たちは舞台裏から出てきて踊り出した。僕もリズムに合わせて手拍子していた。

「チ・ハ・ル タ・ク・ミ オ・メ・デ・ト・ウ」

この文字を見て智遥、拓実おめでとう。どういうことなのか全く意味が分からなかった。

演技を終えて僕はブラボーと声をかけた。これは誰のための演出?

たっくん上がってきて。僕は舞台に上がった。

今日はどういう日か分かる?

バレンタインだよ。それで呼ばれたってことじゃないの?何か他に忘れていたっけ?

たつくん今日は付き合って8ヶ月記念日だよ。本当は毎月とか半年したかったけれど練習が忙しかったりして中々出来なくてゴメンね。

だからチアリーディング部のみんなに協力してもらってたっくんを喜ばせたいなって思ってみんなで考えていたよ。

僕のために、智遥ありがとう。そして真海を始めチアリーディング部の皆さんありがとうございますと頭を下げた。

真海はじゃあ第2弾やろうか。

僕はまだ何かあるの?僕1人のためにチアリーディングの演技をしてくれただけでも嬉しいのにこれ以上何があるのかと期待と不安でいた。

智遥や真海、そしてチアリーディング部の人たちは一同に舞台裏に行って何かを取りに行くつもりでいた。智遥は梱包されたものを僕に渡した。

たっくん、袋開けてみて。

言われるがまま僕は袋を開けるとベージュのマフラーが入っていて智遥も同じものを身につけていてお揃いのものをくれたと気がついた。

智遥、ありがとう。大好きだよと抱きついた。

真海も含めてチアリーディング部の人たちは拍手して感動のあまり泣き出してしまう部員もいた。

僕のため、いや僕と智遥のためにここまでしてくれたチアリーディング部の人たちには感謝してもしきれない気持ちでいっぱいだった。

拓実君、お返しはいらないのでチョコレートどうぞ。僕は始めてバレンタインに彼女からのプレゼントと女の子から義理チョコというものをもらった。

時間が余っていて智遥は僕との馴れ初めやデートでの話、何度でも話したいのか大晦日の話と盛り上がっていた。智遥と真海以外は初めましてのはずなのにチアリーディング部のみんなに頭を撫でられてかわいい〜と盛り上がって僕は智遥と真海と電車に乗って帰って行った。


私も紹介してよ

智遥は1つ気になっていることがあるとラインが届いた。

僕は気になること?何でも言って。

大晦日に私の家に来てパパとママにたっくんのことを紹介をしたけれど私はたっくんの家に行って彼女ですって紹介されてないけど紹介はしてくれないの?

そんな事ないよ。ただタイミングがなかっただけだよ。そうだ今度の土曜日って何か予定ある?

午後からサッカー部の応援にしに行く予定だけど。

じゃあその帰りに僕の家に来てよ。家族に紹介するからさ。尼川駅に来てもらえれば案内するよ。

たっくんの家に行くの始めてだから楽しみだよ。試合が終わったらまた連絡するね。

僕は母に話があると声をかけた。

拓実、改まってどうしたの?

土曜日の夕方だけど彼女が家に来るけれどいい?

うん、いいよ。拓実がどんな子と付き合っているのか気になるからお母さん楽しみにしているよ。

土曜日、智遥は蓑谷運動公園で行われた蓑川女子高校サッカー部の応援に行っていた。2時間後、試合が終わったから今から尼川駅に向かうねと智遥からラインが届いた。僕は駅に向かって歩いていた。

尼川駅で定期券をかざして智遥が来るのを待っていた。1本、もう1本と電車が僕の前を通り過ぎるが一向に智遥が降りてくる気配がない。智遥まだかなと待っていた。

たっくん〜、こっちこっち。

制服を着てボニーテールをしている女の子が僕に手を降っている。紛れもなくそれは智遥だった。

智遥お疲れ様。サッカー部の試合どうだった?

3対0で勝ったよ。選手たちがいきいきとプレーしている姿を見て私たちも嬉しかったよ。

チアリーディング部は勝利の女神だね。家から歩いて5分くらいだから行こうか。

僕と智遥は改札を出て家に入った。

「ただいま〜お客さん連れて来たよ〜」

僕の母と父は走って玄関にやって来た。父は思わず拓実はこんなかわいい女の子と付き合っているのか、どうしてまた拓実と?

初めまして拓実君とお付き合いさせてもらっている桃川智遥です。拓実君は礼儀正しくて優しい子だなといつも感じています。

母は智遥さん上がって。狭い家だけどゆっくりしていってね。お母さんつまらないものですがどうぞ、それでは失礼します。

智遥わざわざありがとうございます。

リビングに行って僕は今から何を聞かれるのかと思うと怖くて仕方なかった。

父と母は智遥に色々と聞いていた。

どこで知り合って馴れ初めは?付き合った経緯、2人でいる時はどんな感じなのか質問していた。

智遥は馴れ初めは尼阪線の車内で痴漢から助けてくれて付き合ったのは電車で喋るようになって私がケガをして入院していた時に優しい言葉をかけてくれてこの人と付き合おうと思いました。2人でいる時は照れ屋で手を繋いだ時やちょっと揶揄(からか)うと顔が真っ赤になる姿がホントかわいくて愛おしく思います。私、チアリーディング部のキャプテンをしていますがよく拓実君は大会や他の運動部の応援に来てくれてありがたいなと思います。

母は智遥さんスゴい大人の対応しているけれど拓実とはいくつ歳は離れているの?

私が拓実君の1つ上です。蓑川女子高校チアリーディング部の先輩、同級生、後輩からはスゴいかわいいとみんなの弟みたいな存在です。

ピーンポーン、宅配に来ました。

たっくん、今日何食べるの?

さぁ〜、何も知らされていないよ。母さん何を注文したの?

お寿司とオードブル注文したよ。

拓実の彼女が来たのにおもてなしもなにもしない訳にはいかないでしょ?

智遥、そういう事だって。

うふふ、たっくんが私の家に来た時と同じだね。

智遥の家に行った時と同じ?そうかな?

お父さん、お母さん聞いてください。拓実君私の家に来てくれたことがあってその時に父と母に菓子折りを持ってきてくれてくれて、その理由が彼女の家に行くのに何も持たずに行ったら失礼だからって言うと父は拓実君に君は今日、結婚の挨拶に来たのかっていう話をして家族内で律儀でかわいい子だねという話になりました。

智遥さんの家でもかわいがってもらいありがとうございます。ご迷惑をかけると思いますが宜しくお願いします。

こちらこそ宜しくします。お寿司いただいてよろしいですか?

父は遠慮なく食べてください。

みんなでお寿司とオードブルを食べ終わり、アイスコーヒーと智遥の持ってきたバームクーヘンを食べていた。

智遥は僕の父と母にある提案をした。

もし宜しければウチの両親と今度ご飯でも行きませんか?

私たちはいつでも大丈夫ですが智遥さんチアリーディング部で忙しいと思うからそちらの予定に合わせますよ。拓実の両親が宜しく言ってましたとお伝えください。

ありがとうございます。たっくん明日もサッカー部の応援に行かなきゃ行けないからもうそろそろ帰らなきゃ。

じゃあ尼川駅まで送っていくよ。

たっくんありがとう相変わらず優しいね。

僕と智遥は尼川駅に行って智遥を見送ろうとしたが思った以上に外は暗く、定期券あるから家まで送るよと尼阪駅まで行って智遥を家まで送り届けた。


お声がけ

ある日僕と智遥は蓑谷駅にあるショッピングモールでデートしていた。智遥は最近流行りのサンドウィッチが食べたいとお店を探していた。サンドウィッチならパン屋でも買えるような気がするが何故専門店で買う必要があるのか僕には分からなかった。

サンドウィッチ専門店のあるフードコートに向かって歩いていた。

たっくんこれみてかわいくない?

僕は智遥に言われるがままサンドウィッチを覗いた。サンドウィッチが切ってあって何がかわいいのか分からなかった。どの辺がかわいいと思う?

この断面がかわいいよ。萌え断っていって巷(ちまた)で人気あるけどたっくん知らないの?

萌え断?そういうアーティストがいそうだね。申し訳ないけど初めて知った。

そっか……。じゃあこれから知っていこうねと満面の笑みで僕の方を見ていた。

もっと女の子のかわいいを勉強します。

智遥はイチゴサンドウィッチ、僕はキウイサンドウィッチを注文し、受け取った。

僕と智遥はお互いのサンドウィッチを交互に食べて終わってゴミを捨てて別の場所に移動しようとした時に智遥に声がかかった。

あの、すみません。私こういうものですと1人の男の人が智遥に声をかけてきた。

「尼阪プリンセス 田中」

すみません私にどういった御用でしょうか?

サンドウィッチを並んでいる時にかわいい美少女を見つけたと思い声をかけるタイミングを伺っていました。是非ウチの事務所でモデルとして活動しないですか?

智遥は名刺だけ受け取っておきます。今ここですぐに返事をすることは出来ません。

そうですか、ご興味がありましたらいつでも連絡してきてください、それでは失礼します。

僕は智遥、芸能事務所から声がかかるってスゴいね。勿論尼阪プリンセスと契約するでしょ?

どうしようかな……。今はモデルというよりもチアリーディングをしていたりこうやってたっくんと一緒にデートしている方が楽しくて。それを犠牲にしてまでモデルをしようとは思わないかな。

今すぐ決めなきゃいけないことでもないしゆっくり考えたらいいと思うよ。

そしてアパレルショップに行くと実希と真海に遭遇した。僕は2人にも相談してみたら?

智遥はそうだね。聞くだけ聞いてみるとあまり乗り気ではなかった。

真海、実希ちょっと話がしたいからフードコートに付いてきてくれない?

真海と実希はなんの事か分からず付いてきた。

2人とも忙しい所ゴメンね。

智遥、深刻そうな顔をしてどうしたの?

さっきたっくんとフードコートにいてこれをもらったの。

プリンセス尼阪?これってあの芸能事務所のブリンセス尼阪?

実希、よく知っているね。その人からもらったの。

勿論智遥は事務所入るよね?

みんなとチアリーディングしたり今日みたいにたっくんとデートしているの楽しいからそれを犠牲にしてまでモデルになろうとは思えないの。

智遥、理由はそれだけじゃないとか?

実希、真海覚えているか分からないけれど私前に練習中にケガをしたことあったでしょ?毎日練習していてもケガのつきものなのにモデルとチアリーディングの両立は厳しいと思うの。またケガをする。

真海をその話を聞いて確かに智遥はかわいい顔をしているのにたまに抜けているところがあるからな。

私や実希、拓実君がどうこうすることは出来ないからどうするかは智遥自信で決めな。今すぐモデルをするのかそれともやらないのか。

私は名刺に書いてある田中さんに電話をして今はチアリーディングに集中したいからと断った。

智遥のかわいさがあれば今すぐじゃなくてもまた声がかかるチャンスあるよ。

実希、真海、たっくん私の話を聞いてくれてありがとう。

僕はこの時初めて智遥から悩み相談を受けたような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る