お母さんとのデート①
「お母さん行ってらっしゃい。十時位に家に迎えに来てね。」
「ぴったり十時に迎えに来てチャイムを押すから大丈夫よ。」
「うん。それじゃあ、十時にお願いね。」
「ふへへっ………うん。任せて頂戴。死んでも十時に戻ってくるから。」
これからのデートを妄想しているのか、物凄い蕩けた顔でいやらしく笑う華。二人の娘と息子を育てる大黒柱だが、今だ年は三十代で美貌は衰えていない。
むしろ、大人らしい色気を二十代に比べ増幅させていて、色気が凄いことになっている。そんな母が蕩けそうな顔は、正直画面には映せない程色気のある物となっている。十八歳未満は退場というやつだ。そんな華を見て、一狼が母とはいえ一瞬エロさからピクついてしまったのは仕方がないだろう。無論、一狼は母にバレないように必死に抑えたが。
そんな母親である母を、一狼は手を振って家から見送る。現在の時刻は八時過ぎ。今日は土曜日で一狼と華はデートの予定だが、華の提案で別々で合流するのはどうかとなったのだ。華としては、優しくて格好いい一狼とデートが出来るのは夢にも思って無いことだが、流石に同じ家からデート開始というのは雰囲気的に良くない。
デートに合わせてオシャレをしてきた相手を、お互いに頬を赤らめながら褒め合う。そして、頬を赤らめながら互いに手を少しずつ重ね合う。そんな漫画に出てくるようなイチャイチャを華は味わいたかったのだ。
……といっても、流石に駅前で別々の駅から集合というのは出来ない。そんなことしたら、集合する前に一狼が女共に拐われて、デートどころでは無くなるだろう。だから、家を集合場所にしたのだ。警察を手配して、駅前を少しの間だけ手配しようとするのも華はほんの少し考えたが、一狼に物凄い勢いで止められたのでやむ無く家になった。
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現時刻10:00。
時計の針が丁度0の位置に差し掛かかるタイミングで、まるで待ち構えてたかのように玄関からチャイムがなる。玄関からのチャイムと共に、一狼は初めてのデートということもあり、少し緊張しながら扉をそっと開く。そこには、顔をほんのりと紅く染めた、水色のワンピースを着た女性がバックを肩にぶら下げながら立っていた。
「……ワンピース凄く似合ってるよ華。とても可愛い。」
「──っ!!?」
扉から現れたのは、物語に出てくるような王子様だった。
黒色のタキシードに、ワックスをしたのか太陽の光を反射する黒髪は、王子様といっても過言ではない。そして、その黒髪とタキシードを着こなすのは、男女比一対一の世界での超イケメンの男。男女比一対一でも超イケメンというのに、男女比一対二千でやったらどうなるかなんて分かるだろう。もうこれは人間と表していいのか?神様じゃないのか?写真に何万枚と残しておきたいと思う息子の姿を見て、どんどん胸の鼓動と顔の辺りが熱くなっていく。
気を確かに。まだ、デートは初まって無いんだぞ私──────
ここで倒れてはデートが終わってしまう。
そんなことを危惧した華は、全力で物凄い勢いで加速する心臓を抑え込もうとする。
しかし、息子から出会った瞬間飛んできた私への賛辞と、お母さんではなく本当の恋人と思ってしまいそうな華呼びに、私はいとも簡単に意識を落としてしまった。
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