焦る姉と妹
「ううっ…お兄ちゃんの一番が取られちゃった。どうしてあの女が一番お兄ちゃんに好かれているんだー!!」
「……一狼の一番を争っていた私達だけど、このままいくと危なくないか?一狼は動画配信などで世界的有名配信者だ。今日だって取材の許可やテレビでの出演依頼来ていたし……ここは私達が協力して、一狼の二番目と三番目を勝ち取らないか?」
「ーー一お兄ちゃんの二番目を譲ってくれるなら、協力してあげてもいいよ?」
「ーーーその貧相な体で何調子乗ってんだーーって、痛いです。痛いです。こちらこそ調子乗ってすみませんでしたあああー」
姉の体の上で容赦なくジャンプを繰り広げる妹。
姉は容赦なく自分の上で跳ねる妹に、土下座をすることで許しを得ようとする。
妹であるかおりだが、そこまで貧相な体をしていない。
むしろ、女性全体で見れば中間くらいの大きさだろう。
しかし、この家族の中ではかなり見劣りする。その理由は、母である華と姉である桜の体が豊か過ぎるのだ。少し動けば揺れるその膨らみに、常にかおりは嫉妬からその膨らみを睨みつける。
「……でも確かに、これからはもっとアタックしなきゃ駄目だよね。あの老体が一番になったことは不服で不服で不服だけど、認めるしかないんだし。もういっそのこと襲ちゃうのもあり?そこから既成事実としてーー」
「無理矢理襲ったら、お母さんからの一撃が容赦なく来そうだぞ?お母さんだって折角の一番目を取れたんだから、そんなことしようものなら最悪この家から永久に追放されそうだし……う~ん。どうするか?……お母さんに土下座して許して貰うか?」
二人は首を傾げて、一狼をどうやって振り向かせるか考える。
このままいけば一狼との結婚は出来ると思っていた二人だが、あっさりと一番目を勝ち取られたことに不安が残る。あのデートが終わってからの二人のいちゃつきは目に余る物がある。
キスをしたり抱きついたり、食べさせ合いをしたり。まるで物語の主人公達のようにいちゃつく二人に、一狼はこのままお母さんとしか結婚しないのではないかと思ったりもしてしまう。女の出産に対する適齢期は憎いことに、男達に対する性欲の強さから五十歳までが正常である為、このまま赤ちゃんまで産まれればその危険性が更に高まる。
ーーいや、もはや産まれてきた子供が男の子だったらその子と結婚をすれば…………だがしかし、男の子が産まれてくる可能性は限りなく低い。うーん。どうするものか。
そうこう考えている内に、隣の部屋からはいやらしい老体の声が聞こえてくる。どうやら今日は一狼の部屋でのようだ。妬ましいことである。本当に妬ましいことである。バレずに部屋に取り付けたカメラで後でおかずにするつもりだが、毎日のように羨ましい行為をされると親であれ殺意が湧いてくる。どうして一狼は母と付き合うことにしたのだろうか?いくらでも付き合ってあげるというのに。どうしてよりによってあの権力お化けの母なんだ。ーー幸い、仕事に出掛ける為平日の昼間は母は居ないが、それは私達とて同じ。休日になっても、この二人でのいちゃつきが続くことが目に見えている。
「デートでお母さんは成功したんだし、こうなったらデートに誘って私達もそのままフィニッシュ?いや、でもお母さんがそれを許してくれるかどうか怪しいなぁ……」
「それとも二人で協力して二人で一狼のこと襲うか?平日私達が猛ダッシュで学校から帰ってくれば母が帰ってくる前には絶対に帰ってこれるはず。」
「確かにそれはありかも。……でもなぁ、異常に勘もいいからな老体は。」
二人の話し合いはまだまだ続く。
ーー華が部屋に取り付けて置いたボイスレコーダーが今も稼働していることに気付かずに。
翌日、ゴミ捨て場には引きちぎられたカメラが捨てられていたらしい。
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